小沢あやが、さまざまな業種のフリーランスに話を聞く『フリーランスな私たち』。今回のゲストは、漫画家の山本さほさんです。
幼なじみの「岡崎さん」との思い出を描いたエッセイ漫画『岡崎に捧ぐ』が話題となり、30歳でフリーランスの漫画家になった山本さん。描くかどうかを決める判断軸や、仕事が続くか不安になったときの対処法などを伺いました。
profile/山本さほ
漫画家。2014年にnoteに掲載したエッセイ漫画『岡崎に捧ぐ』が注目を集め、2015年からビッグコミックスペリオールで同漫画を連載。現在は週刊ファミ通にて「無慈悲な8bit」、週刊文春オンラインにて「きょうも厄日です」を連載中。小説の表紙や挿絵等も担当している。ゲームが大好き。
https://twitter.com/sahoobb
https://www.instagram.com/saho_yamamoto
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profile/小沢あや
ピース株式会社 代表取締役社長 /編集者。企業のメディア・コンテンツ支援のほか、WEBマガジン「つんく♂の超プロデューサー視点!」「いや、ほんと音楽が好き。」編集長など、ミュージシャンやアーティストの発信支援も行う。ハロー!プロジェクトが大好き。
Contents
嫌な目に遭ったら「ネタをありがとう」。ポジティブな精神で漫画に
小沢
山本さんの漫画の内容は、「よっしゃ、取材しよう!」と思って出てくるエピソードではないように感じます。日常のささやかな面白さを、どうやったらあれだけ描き続けられるんでしょうか?
わたし、人に興味がありすぎるんだと思います。とくに、変わったことを言う人にはすごく興味がわいて、周りに「やめといたほうがいいよ」と言われても気になって近づいちゃうんですよね。街でケンカしてる人とかを見かけると寄って行って、野次馬の最前列で見てる、みたいな(笑)。
山本さん
小沢
(笑)。そこには「仕事のネタにするぞ」というモチベーションがあるんですか?
いや、全然ないです。人に興味がありすぎるというのは、漫画家になる前からずっとそうだったので、もともとの性格かな。でも「嫌な目に遭ったときに、それをポジティブにとらえる精神」はあると思います。
山本さん
小沢
どんな風にポジティブにとらえるのですか……?
漫画家になってからは、嫌な思いをしたときに、「でもこれネタにすればいいか!」と考えるようにしています。そうしたら私に嫌な思いをさせた人にも、「ありがとう」という優しい気持ちになれるので。
山本さん
不安になったら、貯金を眺める
小沢
なんとなく最近の山本さんの漫画は、とても楽しそうな感じが前面に出ている気がします。働き方の変化が、心境やアウトプットに与える影響もありましたか?
あぁ、あると思います!フリーランスとして働いていると、わたしのことを嫌いな人はわざわざ会いに来ないじゃないですか。仕事を依頼してくれる人や飲み会で会う人はみんなすごく自分に好意的。嫌な思いをすることが圧倒的に減って、ストレスが溜まらないから幸せを感じるのかなと思います。
山本さん
小沢
たしかに。わたしはありがたいお仕事をいただくと、嬉しいと同時に「いいアウトプットを続けないとこのお仕事がなくなってしまうのでは……」という焦りも生まれるんですが、山本さんはそういうこと、ありますか?
あります、あります。もし全く描けなくなったり、よくない作品を連発したりしたら、仕事で関わっている人は離れてしまうと思うので。不安はありますね。
山本さん
小沢
そういうときは、どうやって立て直してますか?
たくさん寝れば、起きたら元気!
山本さん
小沢
つんく♂さんの歌詞にありそう(笑)。寝不足は、寝るしかない。
あとは、下世話な話ですけど、頑張って貯めた貯金を見ます。わたし500円玉貯金をしていて、それも100万円貯まったんですよ。
山本さん
小沢
すごい。それを見て精神を落ち着けるんですか?
そうそう。わたしの不安の中で大きいのは、「生活していけなくなったらどうしよう」「家賃払えなくなったらどうしよう」なので。「もし何かしでかして、仕事を干されて収入がゼロになったとしても、これがあれば1年は大丈夫だ」って眺めてます。
山本さん
小沢
フリーランスの中には、「まず生活レベルを上げて、その分稼ぐ」という考えの人もいますが、山本さんはわりと慎重派ですかね?
そうですね。前職のアパレルの正社員から漫画家になるのも相当、悩みました。漫画家になっていろいろとお仕事をいただくようになっても、生活レベルを上げるのが怖くて。今でもUberEatsを頼むか悩んだ結果、カップラーメンを食べたりしてます(笑)。500円玉貯金も「もうやめてもいいかなぁ」と考えたこともあるんですけど……結局続けましたね。
山本さん
仕事を引き受けるか決めるときは、憧れの人を思い浮かべる
小沢
山本さんはTwitterやInstagram、作家の岸田奈美さんとのPodcast(現在は休止中)など、さまざまな媒体で発信されています。「岡崎に捧ぐ」もnoteから話題になりましたし、SNSを活用されている印象です。
でも、SNSあんまり得意じゃないなーと思って……。
山本さん
小沢
そうなんですか!?とっても上手な印象です。
自発的に何かするというより、結構、人にやれって言われたことをやってる感じです(笑)。誰からのアドバイスでも、親身になって考えてくれたら素直にやりますね。
山本さん
小沢
じゃあ、これまでうまく仕事を積み重ねてきた裏には、人からのアドバイスが。
冒険が好きじゃないから、人に背中を押してもらわないとできないタイプなんです。「こういう漫画描いてみなよ」と言われて描き始めることもあるし、そもそも漫画家になったことも友だちのすすめでした。
山本さん
小沢
的確な球を投げてくれる友人、すごい財産ですね……。一方、たくさんの仕事の依頼がある中から、どれを引き受けるか自分で決めなければいけないときもあると思います。そこはどう判断してますか?
憧れの人を思い浮かべて、その人だったらやるかを考えています。「あの人だったら、この仕事を受けないだろうな」と思ったら断るようにしてますね。
山本さん
小沢
キャリアチェンジしていきなりフリーランスになると、案件を見極めたり交渉したりするのって、慣れるまで大変じゃなかったですか?
もう、すごく時間がかかりましたね。自分でいろんな仕事を何回も引き受けて、最近ようやく、かかりそうな作業量や価格の相場がわかってきました。漫画家さんは、多分みんな手探りでやってますよね。
山本さん
小沢
山本さんのように連載を持ちつつ新規の案件を引き受けるには、ある程度スケジュールに余白を残しておくことも必要になりそうです。
そうですね。イラストの仕事や単発の仕事、こういうインタビューの仕事は普段の仕事と違って気分転換になるので楽しいです。そういう楽しい「味変」の仕事を入れる余裕は、残すようにしてます。
山本さん
小沢
そうなんですね。ちなみに山本さんは、手広く大きく「ガッと売れてやる!」というよりは、心地よい範囲で仕事をしていくことが、大切……という感じですかね?
そうですね。わたしは「自分の生活や楽しみを犠牲にしてでも仕事をしたい」というタイプではないので、今はすごく幸せに働けています。
山本さん
背中を押してくれる友だちを大切に。まずは漫画家として10年生き残りたい
小沢
漫画家として、今後やりたいことはありますか?
一番の目標は「10年生き残る」。デビューの年に、先輩の漫画家に「10年生き残れる漫画家は1割しかいないよ」と言われて、ずっと目標にしてるんです。まずはあと3年頑張っていきたいなと。あとは、もう1回、紙の漫画で連載したくて。進んでいる話もあるので、実現したらなって。
山本さん
小沢
すごい!フリーランスだと、普段の仕事を進めながらも、新しい仕事の種まきをする必要がありますよね。他にも何か準備していることはありますか?
今後は自分の経験を活かしつつ、フィクション漫画も描きたいんですよね。エッセイはやっぱりネタが有限。あと30年ぐらいは漫画を描きたいので、少しでも長くこの世界にかじりつくためにはフィクションもやらなきゃと思って、アイデアをメモしています。
山本さん
小沢
素敵です。最近では、縦スクロールでフルカラーの「ウェブトゥーン」も流行していますが、そういった新しいフォーマットについてはどう考えていますか?
個人的には、ウェブトゥーンはまだ使わず、しばらくは今のままの書き方をすると思います。でも、それこそ誰かに「描くといいよ」ってアドバイスされたら、全然描くかもしれないです(笑)。あんまりこだわりがないんです。
山本さん
小沢
こだわるとしたら「漫画を描きたい」というところですかね?
そうですね。わたし、人を楽しませるのがすごく好きで。友だちを楽しませたいって思ったときに、その手段として一番得意だったのが絵だったんです。だから、表現としては漫画しかないですね。
山本さん
小沢
なるほど……!お話を伺っていて、山本さんの漫画家としての働き方には、随所で「友だち」が関わっているんだなと感じました。
働く中で、一番大切にしているのがやっぱり友だちなのかなあ。いろいろ助けてもらったり、アドバイスをくれたり……わたしの人生で友だちはすごく大きいものだなと感じますね。
山本さん
小沢
今後の目標、みたいなものはありますか?
とりあえず漫画家として無事に10年目を迎えるのが目標です。でも……さっき「こだわるとしたら漫画を描くこと」って言ったばかりですけど、お蕎麦とかも売りたいですね。
山本さん
小沢
蕎麦……?
駅中にあるすごく混み合ってるお蕎麦屋さんとかって、すごくプロフェッショナルな感じがしませんか?注文が入って、ネギとか天ぷらとかのせて……っていうのを手際よくやっていて。それを見てると、「わぁ、働きたいな」って憧れるんですよね。そう考えると、漫画家という職業にもあまりこだわってないのかもしれないです(笑)。
山本さん
小沢
「今の仕事でなくても、どうにでもなる」と思えるのは、強さですよね。
やれと言われたら、なんでもやるかなと思います。働くのは好きなので、老後は色んな仕事をしたいですね。
山本さん
<構成:佐々木優樹 編集:ピース株式会社>
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