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【三足のわらじ】大阪のフリーライターが副業の枝を広げるその理由とは?

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内閣官房日本経済再生総合事務局が発表した「フリーランス実態調査結果」によると、現在、日本のフリーランス人口は約462万人。就業者の5~7%がフリーランスであるとされ、同事務局のアンケートでは、7割以上のフリーランスが現在のワークスタイルに満足していると回答しています。一方、収入について満足しているフリーランスは4割と低め。企業の枠にとらわれない働き方で人気のフリーランスですが、課題はまだまだあるようです。

今回は、大阪で会社員からライターへ転身後、占い師やハンドメイドアクセサリーの製作・販売を副業として展開している上田美保さんにお話をうかがってきました。独立して15年になるという上田さん。フリーランスとしての働き方に、日々どのように向き合っているのでしょうか。

派遣事務から占いの世界へ!異業種への挑戦!

フリーナンス

まずは、上田さんがフリーになったきっかけから教えていただけますか?
最初はフリーランスになろうという積極的な気持ちはなかったのですが、占いが好きだったので、占いの仕事ってあるのかな?と探してみたんです。たまたまライターの募集を見つけて、こんな仕事があるんだと思いました。そこから、会社員しながら空いた時間に原稿を書くようになりました。あるときに、事務の派遣期間が満了して次の仕事がなかなか見つからなかったことがあって。とりあえず収入がないのは困るので、ライターで一時的にしのごうと仕事をめいっぱい増やしたことがあったんですが、そのうちに、これだけでも食えるな……と(笑)

上田さん

フリーナンス

なるほど。最初から「独立するぞ!」と意気込まれていたわけではないのですね。フリーランスになって15年以上経つとのことですが、フリーで長く稼ぎ続けるコツのようなものがありますか?
あれば私が知りたいくらいですが、「辞めないこと」ですかね。なんでも続けていればチャンスが降ってくることもあるので。 それと、ニッチな得意分野を持つことですね。特にライターの場合ですけど、誰にでも書けるジャンルの仕事では、昨今ほとんど需要がないので、他の人が書けないような専門を持てれば強いと思います。

上田さん

フリーナンス

継続は力なりですね。上田さんはライターを続けながら、実際の占い師としても活躍していますが、どのような経緯があったのでしょうか?
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上田さん愛用のタロットカード
私は高校生のときからタロット占いが得意で、当時のバイト先でもちょっと評判になってお店に来たお客さんを占ったりしていたんです。

その後も本格的に占いを勉強したいと思ったので、ライターは続けながら師匠のような人について、占いの知識を深めていきました。

最初は難波のビルの屋上で占い始めたんですよ。人を相手にする仕事なんで、人を相手に経験を積んでいくのみです。ちょっと慣れたらイベントに出たりして、とにかく数をこなしていきましたね。そのうちに決まったお客さんが来てくれるようになって、だんだん安定してきました。

上田さん

フリーナンス

やはり場数が大事なんですね。さまざまな相談を持ち込まれると思うのですが、どうやったら占い師になれるんですか?
私は師匠につきましたが、本などで独学でも大丈夫だと思います。占いは大きく分けると、命術(めいじゅつ)、卜術(ぼくじゅつ)、相術(そうじゅつ)と3つの占術があるのですが、今から占い師を目指そうと思っている人は、このどれか2つについて勉強しておくといいと思います。 命術は生年月日をつかって個人の性格や相性を占ったりしますが、恋愛相談に訪れたお客さんのなかには相手の生年月日を知らないという人もいます。ですので、タロットカードのような卜術も知っておくといいですね。いろいろな相談者に柔軟に対応することができます。

相術は手相や人相、家相や風水などですが、どの占いを選んでも客商売ですので、相手を励ましたり喜ばせたりできる人がお客さんを集めます。表現力やコミュニケーション力、そういったものは日頃から意識して磨いておくといいですね。 そして、タロットカードの場合は、タロットの意味をたくさん知るようにしてください。偶然出たカードから相談者の状況に合わせた的確なアドバイスをするためには、50個の意味より、100個の意味を知っている人の方が有利です。

上田さん

副業?複業?アクセサリー製作へのチャレンジ!

フリーナンス

奥が深い世界ですね。上田さんはライターと占い師の仕事を並行させながら、アクセサリー製作・販売も始められたそうですが、こちらもきっかけを教えていただけますでしょうか。
アクセサリーを仕事にする気はまったくなかったんですけど、これまた失業がきっかけになってまして。職場ともめて、すごく嫌な辞め方をしたことがあったんですよ。で、辞めたあと1カ月ぐらい、人と口をきくのも嫌で、就職する気にもなれず、黙々と家でアクセサリーを作ってたんですね。何か生産的なことをしてないと辛かったので。キレイなものを作ると、小さな達成感があるじゃないですか。でも、作っても作っても満たされなくて、どんどんアクセサリーがたまっていって、家族にいったい何をやってるのかと言われるようになってしまって。そんなに作るなら、売れば?と言われたのがきっかけです。逆境はよくきっかけになる(笑)。

上田さん

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一つひとつが手作りです

フリーナンス

まさに、ピンチをチャンスにですね。私も販売サイトのCreema(クリーマ)さんを拝見しましたが、上田さんは【Impression】というお名前で作品を販売されているんですね。製作されたアクセサリーはどれもきれいな石を使っていて、とても目を引きました。
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毎日身に付けたくなる親しみやすさ
もともと天然石がすごく好きなんですが、専門店で材料の石を購入しようとすると、どうしても高くなってしまいます。ですので、私はeBay(イーベイ)などをつかって個人輸入をしています。手頃な価格で提供できるように、できるだけ安く石を仕入れているんです。手間はかかりますが、買ってくれたお客さんが喜んでくれるので、それがいちばんの励みになっていますね。

上田さん

フリーナンス

上田さんの仕事への情熱がヒシヒシと伝わってきました。では、フリーランスとして仕事をするうえで気を付けていることは何かありますか?価格設定のコツなど、契約まわりのことなども教えてください。
気をつけていることはスケジュール管理ぐらいかなあ。締め切りが重なると、自分の首を絞めてしまうので。価格設定については私なりの考えがあって、フリーランスで食っていくためには最低月収いくら、最低時給はいくら、と決めるようにしています。そこから単価を決めていくんですね。そこに満たない仕事は受けない。これは鉄則です。ライターやアクセサリーの販売は、趣味の延長でお小遣いかせぎにやってる人も多いので、生計を立てるうえではそこに単価を合わせにいかないことが大事だと思います。

上田さん

フリーナンス

複数のお仕事をしていると、仕事のスキルを上げるための時間を捻出するのも大変そうです。何か工夫がありますか?
スキルが磨かれてるかどうかって、フリーランスの仕事では、自覚しにくいんですね。上司に褒められるわけでもないですし。自己満足でもいいから、新しいことをやってみるぐらいかなぁ。新しいクライアントをつかんだら、あ、成長してるな、とそこでわかります。 ライターに関しては、あっちこっちに応募してみるといいんじゃないでしょうか。クライアントにより、要求されることが違いますし。結局は数をこなすしかないですよね。アクセサリーについてはですねえ……人ができないことをできているかどうか。私は技術を磨くタイプではないので、どれだけ自分にしかない情報や知識を収集できているか、で勝負していて。それもスキルのうちかな、と考えています。

自分の強みを磨いて、それを全部生かす方向性を探す。私で言えば、語学力とか過去に貿易会社で勤務していた経験とか、文章力とかを総結集してアクセサリー販売する。これだけで、人とちょっと違ったことができるんです。作る才能はなくても(笑)。

上田さん

個人戦の難しさ

フリーナンス

しっかりとした意志をもって仕事に取り組む上田さんの姿が浮かんできました。では、これまでフリーランスになって困ったことなどはありましたか?
仕事が少ないときは、確実にお金に困ります(笑)。あと、自己管理ですね。誰も見張ってないので、つい、サボる。フリーランスって休みを自由にとれると思ったら大間違いで、休んだら自分が困るだけ。誰も代わってくれないですし。あと、フリーランスになった頃はクレジットカードを作れなくて、数年間はカードがなかったですね。会社を辞める前に作っておくべきだったとつくづく思いました。 あとは、私は帳簿関係のことがあまり得意じゃなくて、確定申告とかいつもイヤイヤやってます……

上田さん

フリーナンス

なるほど。確かにそういった点は会社員の方がラクかもしれませんね。フリーランスはチームワークではないので、納期との戦い方にも苦労があるのではないでしょうか。
うーん……私はプレッシャーに弱いので、難しい質問ですね。担当さんと仲良くなっておくと、締め切りを延ばしてもらえる(笑)。まあ、納期というより、私の場合、1日にこれだけの量をこなさないと最低日給が稼げない、といったような考え方をしますね。例えば3万円の仕事があって、これに3日以上かかってると、日給1万円以下になっちゃうじゃないですか。それは、信条に反する(笑)。自分が稼いでる単価にシビアになることですかね。

上田さん

この先もフリーランスで走り続けるために

フリーナンス

さすがです。上田さん独特のルールを感じますね。では、副業の位置づけのようなものがありますか?趣味の延長であるといったことや、金銭面など、おすすめできるポイントを教えてください。
まず、副業(私で言えばアクセサリー販売)の位置づけは、それをやらなくても生活できること。時間にしばられないこと。ノルマがないこと。インターネットでの販売が副業として魅力的な点は、一度出品したら永遠にそこに並んでいるので、いつかは誰かが買ってくれる。 最初は大変なんですけど、出品してしまえばあとは待つだけでショップを続けていけます。そこは、リアルな店舗とは大きく違う点ですね。

上田さん

フリーナンス

リアル店舗との違いですか……深いですね。あと2つだけ、質問させてください。フリーランスはクライアントの開拓に苦労すると耳にすることが多いのですが、上田さんはどのようにされていますか?
ライター業に関しては、クライアント開拓は、最初はクラウドワークスみたいなところで探すのもいいと思うんです。最初はね。私がライターを始めた頃はそんなサービスはなかったので、自分が興味あるサイトを片っ端から調べてました。今は会社のサイトが必ずあるので、そこでライター求人してたりしたら、もういきなりサンプル原稿とともに仕事ないか連絡しちゃう失礼なこともしてましたね(笑)。でも、これで結構仕事をもらえたりしました。根気よく探すと結構ありますよ。メディア関係の会社。

上田さん

フリーナンス

では最後に、今からフリーランスになろうとしている方々に向けて、メッセージをお願いします。事前に準備しておいた方がよいことなどがあったら教えてください。
私は準備などなく、失業してフリーランスになったもので(笑)。でも、仕入れが発生する仕事なら、ある程度の運転資金は必要ですよね。営業経験は、私はないです。あったほうがいいかもしれませんが、必須ではないと思います。それより自分自身のマネジメント力かなあ。仕事を取りにいかないといけないので。フリーの仕事ってリスクヘッジが大事なんですよ。仕事をもらえるときももらえないときもあるし、こんなご時世なんで、ずっと順調にいくということはないですし。Aという仕事がもらえなくなっても、Bがあるし、それもダメならCに挑戦してみようとか、いつでもチャレンジできる場所を探しておくというように、常にリスクヘッジを意識するようにしてください。とにかく仕事が切れたら、いちばんメンタルに響くので、やることを用意しておく。セブンポケッツっていう考え方があるんですけど、収入源を分散させておく。私は、それはいつも考えています。

上田さん

フリーナンス

ありがとうございました!

 取材・文/FREENANCE MAG編集部

上田さんの商品はこちらで購入できます!

ハンドメイド・手作り・クラフト作品の販売サイト「Creema」

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