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「ほとんどのことはどうでもいい。正解は自分で決める」ジェーン・スーのフリーランス論

FREENANCE ジェーン・スー フリーランスな私たち 小沢あや

ジェーン・スーさんインタビュー。後半では、仕事での人との接し方、フリーランスに向いている人・向いていない人の特徴などをお聞きします。

「失敗しても命は取られない」と思えば楽になる

小沢:私は最近、下の世代に仕事をお願いすることが増えそうなんですが、立ち振る舞いの正解がわからないまま走っている状態で……。堂々としなきゃいけないなと思いつつ、常に低姿勢でありたいとも思うんです。謙虚でいるのとヘコヘコするのは違うはずなのに、バランスが難しくて。スーさんは自分のポジションが変わっていくとき、人との接し方に悩みませんでした?

スー:うーん……悩んでないですね。小沢さんが何で悩んでいるのか、全然わかんないです(笑)。

小沢:悩みというか、他人への接し方について、不快感を与えたくないという「恐れ」がものすごくあるのかもしれません。

スー:それは多分、「失敗しちゃいけない」「いいことを言いたい」「バカだと思われたくない」と思ってるからですよ。そこを克服しないと。

小沢:まさに、そうなのかもしれません……。

スー:でも相手の感じ方なんて、こちらでコントロールできないでしょ。何事も正解はないので。もう自分自身で「これが正しいんだ」って決めてやるしかないんですよ(笑)。他人にどう思われようが、どうでもいいんですよ。ほとんどのことはどうでもいい。そう思ってないと、仕事なんてやってらんないよ、ほんとに(笑)。

小沢:すごい、その域まではまだまだ到達できてません……!

スー:どうでもよくないのは、自分の出すもののクオリティを落とさないこと、あとは何事にも誠意を持って取り組むこと。

小沢:スーさんは、昔から迷いなく、堂々と行動していたタイプですか?

スー:私も、最初からではなかったと思いますよ。少しずつこうなったんじゃないですかね。

小沢:どうやって、後天的に身につけられたんでしょうか。

スー:やっぱり、失敗し続けることじゃないでしょうか。私、レコード会社の新入社員時代、担当アーティストのラジオ番組に立ち会っている最中にスタジオで消化器をぶっ倒しちゃって平謝りしたことがあって(笑)。最近でも、起きたらラジオの始まる20分前なんてことがあったり、今日もスケジュールを切り間違えてマネージャーに謝り倒したり……。

同席していたマネージャーさん:はっはっは(笑)。

スー:日常的にやらかしてますよ(笑)。失敗し続けて、それでも命までは取られない、失敗しても挽回できるチャンスはあるってわかれば、こういう考え方になるんじゃないですかね。

フリーランスになるなら、自分の性格と要相談

小沢:今日は、フリーランスが奮い立たされるようなお話をありがとうございました。「ずっとフリーランスでやっていくぞ!」っていう人は多いと思うんですけど、フリーランスのままでいるのか、会社員がいいのか、迷っている人もたくさんいるので。

スー:私は会社員として守られるよりも、そこからはみ出て自分でリスクをとってやっていくほうが達成感が大きかったからこの道を選んでいるので。私の話が参考になるかどうかは、人によると思います。

小沢:どちらがいいとかではなく、向き不向きの話ですよね。

スー:そう。ガッツがものすごくある人や、へこたれづらい人にはフリーランス という働き方はいいかもしれない。でも、ほどほどに仕事をしたい人や、誰かと折衝するようなことは避けたいっていう人には、申し訳ないけど全然参考にならないかも(笑)。「私のように強くないとダメ」という話では全くないんですが。

小沢:最後に、スーさんから見て、フリーランスに向いていると思うのはどんな人ですか?

スー:まず、いきなりフリーランスになることはあんまり勧めないですね。発注元が会社なら、そこのシステムがわかっていないとどうにもならんと思うので。先ほど仕事相手の見極めの話もありましたが、まずは会社員として組織の中で働いてみると、注意すべき人や、「こういう人にはこういう対応がいい」というのも自然とわかると思います。

小沢:たしかに、わたしも10年ほどの会社員経験で学べた基礎があります。

スー:それぞれにシビアなところはありますが、会社員に比べると、フリーランスはやっぱり守ってくれるものが圧倒的に少ないです。それを前提に、自分の性格にフリーランスという働き方が合っているかはよく考えたほうがいいと思いますね。フリーランスは、「今月全然やる気しないんだよ」なんて言ってたら、来月の入金がそのぶん普通に少なくなります。仕事のやる気にムラがないとか、いろんなことをあまり気にしない人のほうが合っているとは思いますよ。

# 編集後記

取材中、手帳をパラッと開いて見せてくださったスーさん。びっしり埋まったスケジュール欄の下には、大きな文字で「敵は己の中にあり」と書かれていました。「なんか面白いと思って書いちゃったんだよね」とのこと。他人の評価に振り回されず、常に自分と向き合う。悩むのではなく、プランを考える。それがスーさんの芯の強さの理由なのかな、と思いました。

撮影/須合知也 構成/佐々木優樹

ジェーン・スーさんの最新著書

『ひとまず、上出来』
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