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「ほとんどのことはどうでもいい。正解は自分で決める」ジェーン・スーのフリーランス論

FREENANCE ジェーン・スー フリーランスな私たち 小沢あや

独立4年目の小沢あやが、さまざまな業種のフリーランスに話を聞く連載『フリーランスな私たち』。今回のゲストは、コラムニスト・ラジオパーソナリティとして人気を博しているジェーン・スーさんです。

いくつものコラム連載を持ち、毎週配信のラジオやPodcastでは軽快なトークを繰り広げているスーさん。仕事を受けるときの基準や、フリーランスとして働く上での不安やストレスとの向き合い方、仕事をする相手の選び方などを伺いました。

profile/ジェーン・スー
コラムニスト・ラジオパーソナリティ。会社員として3社で勤務した後、mixiに書いた日記をきっかけにコラムニストとしてデビュー。パーソナリティを務めるTBSラジオ『ジェーン・スー 生活は踊る』、Podcast『ジェーン・スーと堀井美香の「OVER THE SUN」』が注目を集めている。
profile/小沢あや
コンテンツプランナー / 編集者。芸能人や経営者のインタビューのほか、エッセイも多数執筆。「ワーママのガジェット育児日記」などの連載のほか、「つんく♂の超プロデューサー視点!」 編集長も担当。2021年にピース株式会社を設立。

他人が見つけてくれた「得意なこと」をやってみる

小沢:スーさんは、3社で会社員を経験した後に、フリーランスとして独立されたんですよね。

スー:1社目、2社目はレコード会社でプロモーターをして、3社目は、ベンチャー企業の眼鏡屋さんに異業種転職しました。これまで得たスキルが他の業界でも通用するか知りたくなったんですよね。

小沢:業界が変わると、仕事そのものだけでなく、カルチャーに馴染むまで大変なこともあるかと思います。どうやって乗り越えましたか?

スー:そんなに「苦労して乗り越えた」って記憶はないですね。ただ、転職活動時に印象的な出来事はありました。英語で履歴書を書く機会があり、知人に書き方を相談したら、「細かい数字や与えたインパクトを書かなきゃダメだよ!」ってアドバイスしてくれたんです。そのとき「自分の経歴って、こうやって際立たせていかなきゃダメなんだ!」とガツーンと頭を殴られたような感覚があって。そこから、自分自身を粒立てることを意識しています。

小沢:初めての著書『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』の出版から8年経ち、ご活躍されていますが、仕事についての野望や目標は立ててらっしゃいますか?

スー:野望とかは、ほんとにないですね。「目の前のことをちゃんとやっていく」ことと「やりたくないことをやらないですむところに自分を持っていく」、っていうことは強く意識しているかなぁ。

小沢:連載など、一度始まったら止めにくい種類のお仕事もあるかと思います。スーさんの、お仕事を受けるときの基準は何ですか?

スー:信用している人が「これ、あなたならできるよ」って勧めてくれたものは、やるようにしていますね。自分の思う長所とかやりたいこととかよりも、人が見つけてくれた「得意なこと」をやっていく、っていう方向で今、ここまで来ています。誰にでも得意なことはあると思うので、そこを伸ばすほうが自己肯定感は上がる。実績も作りやすいし、連動してお金も稼ぎやすいと思うんですよ。

小沢:自分の得意なことがわからない、って人もいますけど、周囲の後押しに乗ってみる、っていうのはわかりやすいですね。ところでスーさんは「ジェーン・スー」として活動を始めて、知名度が上がっていく中で、自分の名前や顔が世の中に広がっていくことに不安とかはなかったですか?腹をくくったタイミングとか、ありますか?

スー:いえ、今も腹はくくってないですよ。くくらずにすむ範囲の仕事しかしてないです。いまのところは「本の宣伝をちゃんとしてもらえる番組以外のテレビには出ない」って決めてますし。テレビは影響力が強いので、すぐ顔が知られてしまうんですよね。商品を勧めるタイプの広告も、超好きなマッサージチェアの案件しか引き受けていないし(笑)。

仕事は「やりがい」より「手応え」重視

小沢:スーさんのお話を聞いていると、やりたいことだけでなく「やらないこと」をキッチリと決めるのがポイントなのかなと思いました。他にも、やらないと決めていることはありますか?

スー:分厚い本のコメントや帯原稿など、時間が十分にとれない場合はお断りします。でも「どうしてもやりたい!」と思った仕事は、相手に予算がないことがわかっていてギャラが3,000円だったとしても引き受けてますし、「このジャンルは全部お断りします」とかも決めてないです。

小沢:となると、本当にさまざまなお仕事の依頼がありそうです。引き受ける優先順位はどうされてますか?

スー:最新刊「ひとまず上出来」にも書いたんですが、「やりがい」と「手応え」って別ですよね。私は「手応え」重視です。手応えは、やった結果への評判がよく、再び仕事が来たときに初めて感じられるものなんですよ。それから、ギャラ×仕事の効果を考えて、一番大きくなりそうなものからやっていますね。費用対効果が大切じゃないですか? あとは自分がやりたい仕事かな。

小沢:「ギャラの話は苦手」という人も中にはいますが、そこの交渉も大事なことですよね。他にも、仕事を拡張していくための工夫は?

スー:私の場合は、自分自身が「ジェーン・スー」の担当プロモーターなんです。どうやったら名前に価値が出るか、逆算して仕事をしてますよ。「誰もが知ってる出版社から本を出したいな」「そのためには、その会社の雑誌で連載して……」とか。

自分に合う仕事相手を選び、力をつけて交渉する

小沢:守ってくれるものが少ないフリーランスは、信用できる仕事相手を見極めるのも重要。スーさんの見極めポイントはありますか?

スー:感情的に怒鳴ったり、「これパワハラじゃないのかな?」って感じることがあったりする人からは、一切仕事を受けてません。相手を変化させる責任も時間も、こっちにはないですからね。

小沢:たしかに。

スー:ただ、「構造的な搾取や無茶振り」と「ぶっきらぼうなだけの人や仕事に求める水準が厳しい人」って、全くの別物。そこを履き違えると、仕事がなくなってしまうから難しいところですよね。人によって気になるポイントはさまざまなので、まずは自分のストレス耐性を知って、自分に合う仕事相手を選んだほうがいいと思います。

小沢:自分を振り返ると、「あのとき、『それはおかしいですよ』ってやんわりとでも言えばよかったな」って思うこともあって。嫌なことがあったときにその場で対抗する、いい策ってありますか?

スー:撃退術は、正直ないんですよ。だから、あらかじめ足もとを見られないようにしておく。とくにフリーランスは、ナメられないことも大事ですよね。

小沢:はい、ほんとにそうだと思います。

スー:誰に対しても同じ態度で、礼儀正しく仕事のやりとりをしてくれる発注元ばかり……というのが間違いなく正しい世の中だけど、そうはいかないのも現状です。そう言うと、「強くなるしかないんでしょうか?」って悲しげに聞かれることもありますが、「現状それが有効なら、試してみるという手もあります」って返事を、私はしますね。

小沢:キャリアが短くても、ナメられにくくなる方法はありますか?

スー:発注された仕事を期待の120%、130%で打ち返していけば、そういうことはなくなるんですよ。力をつけて、条件の交渉をするようにシフトしていくしかないんじゃないのかなぁ。フリーランスとして働くなら、胆力は持ったほうがいいと思います。