「娘と二人旅がしたいよね」テレ東から独立した佐久間宣行が考える“仕事と家族とテレビと仲間”

佐久間宣行さんインタビュー。後半では、佐久間さんの仕事を「受ける・断るルール」やYouTubeへの挑戦のこと、フリーランスとしての覚悟などに加えて、プライベートなこともお聞きします。

結果がダメでも「俺に頼んだ方が悪い！」と思うようにする（笑）

フリーランスになって、仕事を受ける基準などは作っているんですか。

直感で面白そうって思うものはまず受けて、あとは「やらないルール」だけは決めてます。善悪をジャッジしたり、事故や事件に対して専門家でもないのにコメントしたりする仕事はやらない。それ以外のことは、検討するようにしていますね。あとは若い制作者や知らないジャンルの制作者に出会えそうなものを引き受けるようにしてます。僭越な話だけど、この歳になると、若い人に「佐久間さんの番組を観て育った」と言ってもらえることがすごく増えてきて。そういう人のオファーはできるだけ断りたくないなっていう気持ちがわいちゃいます。

そういう人と仕事する時、プレッシャーはないですか？ 期待を裏切れないな、みたいな。

いやそれはないですよ。普通に嬉しい。僕は元々、自分を信用してないんですよ。大学時代からクリエイティブなことをやってたわけでもないし。天才が「本物」だとすると、自分は「偽物」だと思ってて、だからこそ努力してやってこれたと思ってる。そもそも自分に過大な期待は抱いてないし、圧倒的な能力があって圧倒的な結果を出せる人間だと思ってない。というか、思わないようにしてる。だからプレッシャーはないんですよ。結果がダメでも、「それは俺に頼んだ方が悪いよ！」と思うようにしてるから（笑）。

フリーランスになってYouTubeも始められましたけど、手応えは？

 YouTube は『ゴッドタン』のスポンサー企業さんに「一緒にやりませんか？」と言われて始めたんです。そこは奇特な会社で（笑）。「好きに作ってくれていいです。マネタイズは後で考えます」って言われて。「マネタイズを後で考えるYouTubeって何なんだ」と思ったけど、好きに作らせてもらってるんで感謝してますね。

順調に、数字も伸ばしていらっしゃいますよね。

でも、お笑いに特化したYouTubeの再生回数の限界ってあると思うんです。今のYouTubeって、視聴率の指標が変わる前のテレビに近い状態で。要はインフラとして完全に定着したぶん、「情報」と「学び」と「グルメ」がすごく強い。僕のチャンネルも23万登録ぐらいはすぐに行ったんですけど、最近は伸びが鈍化してきて。多分、ここまでの数字がお笑いに興味がある人のMAXで、ここから先はYouTubeのトンマナに合わせていくのか、お笑いをベースにいろんなものを取り入れていくのか、いろいろ判断しながらやっていく感じですね。まぁ40代半ばでYouTubeで試行錯誤できてる環境って、幸せだなと思いますよね。

「うまくいってない時」に味方をしてくれる人間は何人いるか

今後の人生設計とか、考えてますか？

考えてないですね（笑）。ただ業界の先輩たちには「常に新しいものを仕込んでおかないと、会社員じゃないから、延々と仕事が続くと思わない方がいいよ」ってアドバイスいただいて、僕自身もそうだと思っています。だからよっぽど自分のポリシーに反しない限りは仕事を受けて、新しい出会いや発見があったらいいなと思っています。テレ東にいた頃も、それを繰り返してたら『オールナイトニッポン』のパーソナリティになったみたいなところもあるので。

会社を大きくしたい、みたいな野望はあります？

いや、どうだろうなあ。会社を大きくしたいってのはないけど、後輩に頼られたらどうしようってのは考えるかな。同じように悩んでる後輩はいるから。まだ自分がこの状況に慣れていないから、自分のことで手一杯だけど。まずはフリーランスで1年くらいやってみて、それから考えることかなと思ってます。

これから独立を考えている人に、何かアドバイスがあればお願いします。

具体的に言うと、自分が会社をやめた後に、自分がうまくいってもうまくいかなくても、損得関係なく味方してくれる人が何人いるかは考えといたほうがいいと思いますね。本当に信用できる人がいないんだったら、独立するよりも、まず今の働き方を考えた方がいいと思う。

娘と二人旅行も、ワンチャンあるかも？

そういえば佐久間さん、以前に仕事とプライベートがあまり分かれてないとおっしゃってましたけど、完全に仕事抜きで、プライベートでこれから挑戦したいことってありますか？

本当に趣味が映画、音楽、演劇、料理を作るぐらいしかなくて。趣味と仕事がほぼ一緒になっちゃってるから、これはよくないなと。50歳をこえたら何か見つけていこうと思ってます。

例えば？

早めに老人の趣味に行こうと思ってるんだよね。例えば盆栽とか。みんなより先にスタートしておいて、70歳くらいの時に周りに「あいつ、だいぶやってんな」って思われたい（笑）。あと、一番やりたいことは、娘と旅行に行きたい（笑）。

いいですね、娘さんと旅行。家族旅行ですか。

いやいや、娘と二人ね。家族旅行も楽しいけど、二人ってとこが重要。その夢はもう諦めてたんですけど、1ヶ月ぐらい前に娘と一緒に映画に行ったんですよ。「てことは、旅行もまだワンチャンあんじゃねーか！？」と。
って、インタビューでこんなこと真剣に答えてるの、気持ち悪いかな（笑）。

撮影／阪本勇