どうも。
今回のお話は、ワタクシ天真みちるが結婚するまでの物語です。
正直、フリーランスの「お仕事」の参考になるかはわかりませんが、「結婚」という人生のイベントの中での「一つのケース」として、なにがしかの参考になればと思います。
それでは始めます。
Contents
運命の再会は思いがけなく
前話にて。
緊急事態宣言が解除されて少しずつ元の日常を取り戻してきた頃、一通のメールが私の元に届いた。
差出人は宝塚歌劇団在団中からお世話になっている眼科の先生で、先生の地元・群馬で開かれる会合で歌唱披露してほしい、という内容のメールだった。
先生とは、私の同期の鞠花(まりか)ゆめの紹介で出会い、以後はご家族ともども仲良くさせていただいていた。
タカラヅカを卒業してからも何かと目をかけてくださり、前述の群馬での歌唱を依頼されていたが、コロナ禍となり泣く泣く延期することに。
それから幾年……やっとの思いで開催が決まり、久しぶりに先生にお会いできることになった。
「皆、天真さんにお会いできるのをとても楽しみにしております!」
先生はメールでそうおっしゃった。
天「へへっ。嬉しい事を言ってくれるじゃあないの……」
私は鼻の下を擦り微笑んだ。久しぶりにお会いできる喜びを噛みしめながら、当日の流れをうかがった。
すると先生は、
「当日、会合の目玉としてマグロの解体ショーを予定しています。天真さんにはその前に歌っていただこうと!」
マ、マグロ解体ショー?
私はあまりのスケールの大きさに驚いた。
マグロ解体ショーと天真みちる歌唱……。未体験過ぎる組み合わせだ。
ていうか、参加する人達絶対私の歌声よりもマグロ目当てだろ(>_<)
10:0でマグロだろ。
私もマグロのほうが惹かれるもん。
……そんなことを思ったが、心の中だけに留めておいた。
「絶対に素晴らしい会にしてみせるので楽しんでください!」
先生の気合いは充分だった。
……そんなこんなでイベント前日。
これまでも何度か寝坊で先生との待ち合わせに遅刻していた私は、イベント当日も寝坊する恐れがあまりにも大きいと先生に判断され、群馬に前泊することになった。
先生「駅までお迎えに上がりますので。改札出たところでお待ちください」
そう言われていた私は群馬の駅に到着。改札を出ようとした時、改札の外に先生ではないが見覚えのある男性が立っていた。
天「(あれ、誰だったっけ…………あ!)ひろくん?」
ひろくん「おひさしぶりです!」
そこにいたのは、先生の次男である「ひろくん」だった。
ひろくん、とは
ひろくんと最初に出会ったのは、今から10年ほど前に遡る……。もともと、先生の娘さんであるひろくんの妹さんとお友達だった鞠花ゆめから、
「友達のお兄さんに友達がいないから友達になってあげてほしいの」
という、回文のような依頼を持ちかけられたことがきっかけだった。
聞けば、ひろくんは2005年の雪組シアター・ドラマシティ公演『眠れる月』以降、宝塚歌劇団の全組全公演を観劇しているという猛者で、普段は関西にある鍼灸の大学に通いながら、暇さえあれば宝塚大劇場に足を運んでいるという。
そんなタカラヅカの大ファンであるひろくんなのだが、自分の身の周りでその想いを共有できる通称「ヅカ友」はおろか、お友達がひとりもいないらしい。
そのことを心配したひろくんの妹さんが、ゆめに相談したのだった。
普段から姉御肌で面倒見の良いゆめは、妹さんの悩みを解消すべく、「ひろくんとお友達になろうの会」を企画。私はゆめ様にお友達候補としてチョイスされたのだった。
そして迎えた「ひろくんとお友達になろうの会」当日。幹事のゆめ様、私を含め何名かの「お友達候補」が集った。
前情報で「友達がいない」と聞いていたので、一体どんな人が来るんだろうと、ある意味楽しみにしていた。
会合中、目を一度も会わせてくれなかったらおもろいな、とか、ずっと無口で、口を開いたかと思えば「私に友達は必要ありませんから」とか言い出すような人だったらおもろいな、とか、自分の理想(?)とする「友達がいない人」を想像しまくっていた。
そんな時、ひろくんは現れた。
ひろくん「初めまして☆彡 本日はよろしくお願いいたします☆彡」
私は少々面食らった。
深々と頭を下げ、とても丁寧に挨拶をする。語尾がなんだかキラッとしている。さっきまで想像していたジメッとした印象はまったくなく、むしろカラッとしていた。
天真心の声「一体どうしてこんな人に友達がいないんだろうか……」
そんな風に思いながら、頭を下げた。そして私も自己紹介しようと思い口を開いたその瞬間、
ひろくん「僕は娘役さんに憧れているので、男役には興味はありません☆彡」
信じられないくらいあっけらかんと、曇りなき眼でしっかりと相手の目を見て爽やかにそう言い放った。申し訳なさとかもまったくない。語尾がなんだかキラっとしている。
となりで聞いていたゆめ様は、「え、失礼……」とポツリと言った。
私以外のお友達候補達もドン引きしていた。
出会い頭に歯に衣着せぬ発言をかまし、開始早々閉店ガラガラの空気が立ち込める会場。皆の頭の中に一斉にホタルノヒカリが流れるなかで、私は一人、
「おもしれー男……」
そんな印象を抱いたのだった。