補助金・助成金というと、「申請の手続が難しそう」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、令和2年(2020年)度に改正された「ものづくり・商業・サービス補助金(ものづくり補助金)」は、以前よりも申請しやすく使い勝手の良い形に変更されました。公募も、基本的に通年で行われるようになりました。概要や条件について、わかりやすく解説します!
Contents
そもそも「補助金」って、どういう制度?
ものづくり補助金の説明に入る前に、「そもそも補助金ってどういう制度?」と思っている方に補助金の特徴を説明します。
- 設備投資は前払い、補助は後払い
- 返済不要で利息などがない
- 全額の補助ではないケースも
- 補助金の申請者全員が必ずしも採択されるわけではない
設備投資は前払い、補助は後払い
補助金は、先に支払われるわけではありません。 応募と共に、事業計画通りに設備投資を行い、採択・交付決定の手続を踏まえ支出を行います。最後にまとめて交付請求を行い、初めて補助金が支給されます。ただし、手元資金が限られる場合でも、概算払い・つなぎ融資などさまざまな支援措置があるので、お金がないからと諦めることはありません。
返済不要で利息などがない
補助金は後払いでこそあるものの、返済不要で利息等もないため、事業者側の費用負担が大きく減らせます。
全額の補助ではないケースも
ものづくり補助金の場合は2分の1~4分の3、つまり50~75%が補助対象となります。事業費全額が補助されない場合が大半です。
補助金の申請者全員が必ずしも採択されるわけではない
ものづくり補助金で4割程度、他の補助金でも2~8割程度の採択率です。
上記の特徴を見ると、「補助金の申請って大変そうだし、後払いというのもきびしいな」という印象を持つ人もいるかもしれません。ただ、事業において新しい試みを実践する上で、返済不要なお金が補助されるというのは大きいでしょう。
補助金には「お金」に加えて副次的なメリットも
補助金の補助対象となることは、「お金」に加え、副次的なメリットももたらします。
- 事業計画をブラッシュアップできる
- 対外的な信用度の向上
事業計画をブラッシュアップできる
補助金の補助対象になるためには、事業の要件や事業計画を採択されるのにふさわしいレベルまで磨き上げる必要があります。そのプロセスで、事業計画を具体的なものにすることができ、結果として事業の精度も高まります。
対外的な信用度の向上
補助金の交付対象に選定されると、事業者名や事業名称が公式サイトに掲載され、取り組みが周知されます。「厳しい補助金の審査に通った」という事実は、フリーランスの信用力向上につながるでしょう。
補助金の補助対象になるということは、お金以外の「見えないプラス」も大きいといえます。
ものづくり補助金は「初心者も申請しやすい補助金」に
それでは「ものづくり補助金」の概要を見てみましょう。ものづくり補助金は、令和2年度から制度改正がされ、より「初心者の人に申請しやすい補助金」になったという印象です。
- 実質的に通年募集となり、時期を問わず申請しやすくなった
- 過去3年以内に同じ補助金を受給している事業者には、審査して減点措置を講じるので、初めて補助金申請する方でも採択されやすい
- 100%電子申請
- 必要書類が従来の半分以下
※参照:ものづくり補助金総合サイト
ものづくり補助金の「一般型」と「グローバル展開型」の違い
次は、ものづくり補助金の条件などを解説します。
まず、補助対象の事業には、「一般型」と「グローバル展開型」の2種類があり、性質・金額・申請難易度等が大きく異なります。多くのフリーランスは、「一般型」を活用することになるでしょう。
ものづくり補助金「一般型」とは?
一般型には「通常枠」に加え、新型コロナウイルスの影響を乗り越えるために前向きな投資を行う事業者に対し、「補助率の引き上げ」「広告宣伝費・販売促進費といった営業経費も補助対象」とする新たな特別枠「低感染リスク型ビジネス枠」が設けられました。
概要
「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援。
補助金額
100万円~1,000万円
補助率
- 概要
「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援 - 補助金額
100万円~1,000万円 - 補助率
中小企業者 2分の1、小規模企業者・小規模事業者 3分の2、低感染リスク型ビジネス枠 3分の2 - 設備投資
単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要 - 補助対象要件
補助事業実施期間(交付決定日から10カ月以内かつ採択発表日から12カ月後の日まで)に、発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続がこの期間内に完了すること
- 概要
海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援 - 補助金額
1,000万円~3,000万円 - 補助率
中小企業者 2分の1、小規模企業者・小規模事業者 3分の2 - 設備投資
単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要 - 補助対象要件
補助事業実施期間(交付決定日から12カ月以内かつ採択発表日から14カ月後の日まで)に、発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続がこの期間内に完了すること、また、下記のいずれかの事業であること
※海外直接投資・海外市場開拓・インバウンド市場開拓・海外事業者との共同事業
- 以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること(ただし、申請時点で従業員がいない場合でも申込は可能)
- 事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業 ・小規模事業者等 が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
- 事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする
- 事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
応募申請時点で補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること
なお、補助事業実施期間に新型コロナの影響を受けることを想定して、賃上げ・付加価値額増加の目標を1年間据え置きし、「翌年度から3~5年の間にこの目標値を達成する計画」とすることも可能となっています。 詳しくは、補助金事務局に問い合わせの上、確認してください。
※参照:「令和元年度補正・令和二年度補正 ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金 公募要領 〔一般型(新特別枠含む)・グローバル展開型〕(7次締切分)」
制度自体の説明だけを読むとわかりにくいですが、実際に採択された例をいくつかピックアップしてみましょう。
- AI清掃ロボット等による業務効率化及び自動精算機等による非対面化を通じた収益改善・付加価値創造
- 非接触型弁当販売アプリと分析システムによる顧客最適化施策
- DX・アフターコロナ時代に適したビジネスマッチング・プラットフォームの開発事業
- 日本初!オンラインでのフィナンシャルアドバイザーによる資産運用相談サービス
- HACCP義務化に伴う迅速微生物検査需要を取り込むコーティング技術の生産性向上
上記のように「ものづくり」だけでなく、サービス・IT開発などの分野でも多くの事業が採択されています。公式サイトではこれまでの採択案件の一覧が公開されていますので、ぜひ参考にしてください。
※こちらの記事は2021年5月17日時点の取材をもとに作成しています。掲載されている情報が変更されている可能性もありますので、申請手続をする方や検討中の方はご自身で最新の情報をご確認ください。
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