補助金・助成金というと、「申請の手続が難しそう」というイメージを持つ方が多いかもしれません。しかし、令和2年度に改正された「ものづくり・商業・サービス補助金(以後、ものづくり補助金)」は、以前よりも申請しやすく使い勝手の良い形に変更されました。
公募も、基本的に通年で行われるようになりました。2020年11月の直近は、「9月1日(火)に公募開始、12月18日(金) 17時締め切りの第4次募集」がありますが、その後も公募は続きます。
今回は「ものづくり補助金」について、わかりやすく解説します!
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そもそも「補助金」って、どういう制度?

ものづくり補助金の説明に入る前に、「そもそも補助金ってどういう制度?」と思っている方に補助金の特徴を説明します。
補助金は、先に支払われるわけではありません。 応募と共に、事業計画通りに設備投資を行い、採択・交付決定の手続を踏まえ支出を行います。最後にまとめて交付請求を行い、初めて補助金が支給されます。ただし、手元資金が限られる場合でも、概算払い・つなぎ融資などさまざまな支援措置があるので、お金がないからと諦めることはありません。
●返済不要で利息などがない
補助金は後払いでこそあるものの、返済不要で利息等もないため、事業者側の費用負担が大きく減らせます。
●全額の補助ではないケースも
ものづくり補助金の場合は2分の1~4分の3、つまり50%~75%が補助対象となります。事業費全額が補助されるわけではないケースが多いです。(まれに、100%補助されることもある)
●補助金の申請者全員が必ずしも採択されるわけではない
ものづくり補助金で4割程度、他の補助金でも2割~8割程度(まれに、100%)の採択率となります。
●申請した通りにお金を使う必要がある
当然のことですが、事業計画で示した資金使途通りにお金を使う必要があります。申請時の資金使途以外の使い方をした場合、返還請求や罰則がある可能性も。
上記の特徴を見ると、「補助金の申請って大変そうだし、先払いというのはしんどいな」という印象を持つ人もいるかもしれません。ただ、新しい試みをする上で、返済不要のお金が補助されるというのは大きいと思います。
補助金には「お金」に加えて副次的なメリットも

補助金の補助対象となることは、「お金」に加え、副次的なメリットももたらします。
補助金の補助対象になるためには、事業の要件や事業計画を採択されるのにふさわしいレベルまで磨き上げる必要があります。そのプロセスで、事業計画を具体的なものにすることができ、結果として事業の精度も高まります。
●対外的な信用度の向上
補助金の交付対象に選定されると、事業者名や事業名称がWebサイトに掲載され会社の取り組みが周知されます。「厳しい補助金の審査に通った」という事実は、フリーランスの信用力向上につながるでしょう。ものづくり補助金の採択事例は参考になるので、機会があればぜひ一読を。
補助金の補助対象になるということは、お金以外の「見えないプラス」も大きいといえます。
ものづくり補助金は「初心者も申請しやすい補助金」に
それでは「ものづくり補助金」の概要を見てみましょう。ものづくり補助金は、令和2年度から制度改正がされ、より「初心者の人に申請しやすい補助金」になったという印象です。
●過去3年以内に同じ補助金を受給している事業者には、審査して減点措置を講じるので、初めて補助金申請する方でも採択されやすい
●100%電子申請
●必要書類が従来の半分以下
ものづくり補助金の「一般型」と「グローバル展開型」の違い
次は、ものづくり補助金の条件などを解説します。
まず、補助対象の事業には、「一般型」と「グローバル展開型」の2種類があり、性質・金額・申請難易度等が大きく異なります。多くのフリーランスは、「一般型」を活用することになるでしょう。
※新型コロナウイルスに関する対策のための「特別枠」も存在しますが、今回は特別枠の解説を省略します。
一般型
●概要
「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援
●補助金額
100万円~1,000万円
●補助率
中小企業者 2分の1、小規模企業者・小規模事業者 3分の2
●設備投資
単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
●補助対象要件
補助事業実施期間(交付決定日から10ヶ月以内かつ採択発表日から12ヶ月後の日まで)に、発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続きがこの期間内に完了すること
グローバル展開型
●概要
海外事業の拡大・強化等を目的とした「革新的な製品・サービス開発」又は「生産プロセス・サービス提供方法の改善」に必要な設備・システム投資等を支援
●補助金額
1,000万円~3,000万円
●補助率
中小企業者 2分の1、小規模企業者・小規模事業者 3分の2
●設備投資
単価50万円(税抜き)以上の設備投資が必要
●補助対象要件
補助事業実施期間(交付決定日から12ヶ月以内かつ採択発表日から14ヶ月後の日まで)に、発注・納入・検収・支払等のすべての事業の手続きがこの期間内に完了すること、また、下記のいずれかの事業であること
海外直接投資・海外市場開拓・インバウンド市場開拓・海外事業者との共同事業
●その他条件(一般型・グローバル展開型共通)
以下の要件をすべて満たす3~5年の事業計画を策定し、従業員に表明していること。(ただし、申請時点で従業員がいない場合でも、申込は可能)
・事業計画期間において、給与支給総額を年率平均1.5%以上増加。(被用者保険の適用拡大の対象となる中小企業 ・小規模事業者等 が制度改革に先立ち任意適用に取り組む場合は、年率平均1%以上増加)
・事業計画期間において、事業場内最低賃金を地域別最低賃金+30円以上の水準にする。
・事業計画期間において、事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加
応募申請時点で補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有していること
このように、制度自体の説明だけを読むとわかりにくいですが、実際に採択された例をいくつかピックアップします。
・非接触型弁当販売アプリと分析システムによる顧客最適化施策
・DX・アフターコロナ時代に適したビジネスマッチング・プラットフォームの開発事業
・日本初!オンラインでのフィナンシャルアドバイザーによる資産運用相談サービス
・HACCP義務化に伴う迅速微生物検査需要を取り込むコーティング技術の生産性向上
このように「ものづくり」だけでなく、サービス・IT開発などの分野でも多くの事業が採択されています。令和2年は新型コロナウイルスの影響もあり、「新型コロナウイルス対応のケース」なども含め、事例が多様化しています。
令和2年度の特別措置は、4回目の募集で終了しますが、令和3年度も同様に、新型コロナウイルス対応をふまえた「ものづくり補助金」に関する特別措置が適用される可能性があります。ぜひ最新のものづくり補助金要綱をご確認下さい。
参考
「ものづくり補助金要綱」
http://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/4th/reiwakoubo_1106.pdf
「ものづくり補助金総合サイト」
http://portal.monodukuri-hojo.jp/
※こちらの記事は2020年12月1日時点の取材をもとに作成しています。掲載されている情報が変更されている可能性もありますので、申請手続きをする方や検討中の方はご自身で最新の情報をご確認ください。