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「宝塚にいたことは隠してた」退団後30代で会社員デビュー、そして起業。元タカラジェンヌ・天真みちるの仕事論

フリーランスな私たち 天真みちる 小沢あや

天真みちるさんインタビュー。後半では、フリーランスにとって重要な「一緒に仕事をする相手の見極め方」や他人とのコミュニケーションのとり方などをお聞きします。

考えが違う人とも「表現で勝負」できる世界だから面白い

小沢:働く上では、仕事相手の見極めも重要。「一緒に働くならこんな人」って、決めてたりします?

天真:うーん、「宝塚出身」をその人がどう捉えるかは、1つの基準になるかもしれません。例えばエッセイの編集担当の方は、宝塚カルチャーへの愛がある方。踏み込みすぎない絶妙な距離感を保ちつつ、「ここはもう少し知りたいです」など意見もくださるので助かっています。

小沢:宝塚カルチャーを理解してくれている人が担当なら、安心して書けそうですね。

天真:逆に、自分が脚本や演出として関わるときに、演者さんから「自分がやりたいのは宝塚のような舞台とは違う」とはっきり言われることもあります。いろんなこだわりを持って、表現に挑んでいる方がいますからね。

小沢:おお、そんなに正面切って言われることが……!

天真:そういうときは「見てみたら良さがわかるんだよ!!」って、かつてのおじさんキャラが顔を出すこともありますし。以前はいちいち傷ついていたんですが、今は「どうやってこの人を宝塚の沼に落としてやろうかな?」と考えてます(笑)。

小沢:素敵な切り替え方ですね。

天真:それに、そう話す人の芝居から学べることもありますしね。「その人の表現方法を表現者としての自分に組み込んで、かつ宝塚の芝居もできるようになったら最強じゃん」と考えて、超盗み見てます。役者は「じゃあ、あなたの考えを表現で見せてくださいよ」ができる世界だから面白い。

天真みちる

小沢:いやあ、かっこいい。「演技で勝負」という気持ちに持っていくんですね。

天真:私、性格的には「自分、これぐらいなんで」みたいに最初は遠慮しちゃう部分があるんですよね。そうすると「強く出ても大丈夫だ」と相手に思われ、攻撃されることもあるんですが、そこで1回攻撃を受ける。そして人となりが見えたら、場合によっては反撃するというスタイルでやってます。これまで厳しく叩き上げられてきたからか、「来いよ!」「一発くれよ!」となってしまう部分がちょっとありますね(笑)。

小沢:脚本や演出の仕事では、人を指導する立場になることもあるかと思います。そういう場面で気をつけていることはありますか?

天真:相手の心を閉ざさないようにすること。自分をすべてさらけ出す必要はないけど、心の声を出さずに、人を感動させる舞台はできないと思うんです。一度「この人は信頼できないな」と思われたら、心の扉はそうそう開かない。スタッフ一人ひとりとの関わり方は考えています。

信頼できる人と一緒に進むためにも、利益も意識する

小沢:たくさんの準備が必要な舞台は、個人だと引き受けられる年間本数が限られてくるかと思います。最初はフリーランスで仕事を抱えていた編集者が編集プロダクションを作るように、天真さんも今後組織・プロダクション化するなど考えていらっしゃいますか?

天真:わたし、もともと「1人で楽しんでいるんで、ほっといてください」みたいなマインドがちょっとあって。あまり自分から集団を作っていくことはしてこなかったんです。

小沢:どちらかといえば自分だけでも回せる範囲で、楽しく・気持ちよく仕事することを重視されている感じでしょうか。

天真:ただ、活動する中で「一緒にやりませんか?」と声をかけてくださる方はいて。最近、「劇団天真みちる」を立ち上げたのも、何年もの付き合いがある友人たちの声かけがあったからなんですよね。

小沢:そういうきっかけだったんですね。

天真:「ちょうどいい距離感が共有できている、長く付き合ってきた人たちと、ゆっくりゆっくり進んでいく」のが向いているのかもしれないな、と思いつつあります。関わってくれる人たちが朗らかに働けるようにするために、どうやって利益を出していくべきなのか考え始めたところです。

#編集後記

以前、天真さんにエッセイの執筆をお願いしたことがあります。依頼後、すぐさまご本人から返信が届いたときは驚きでした。そして今回、取材のご縁がつながったのですが、天真さんはとても気さく。興奮すると宝塚節で声を張っちゃうところも、サービス精神旺盛で素敵でした。

天真みちる 小沢あや

取材/小沢あや(ピース株式会社)構成/佐々木優樹 撮影/須合知也

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