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フリーランスや個人事業主も対象のリ・スキリング支援! 「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」が2025年10月から開始【社労士が解説】

フリーランスや個人事業主も対象のリ・スキリング支援! 「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」が25年10月から開始【社労士が解説】

2025年10月に施行予定の「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」は、雇用保険に未加入のフリーランスや個人事業主も対象となる学び直し支援策です。

本記事では、この支援事業の背景や目的、支援内容や要件などを解説。加えて、既存制度との比較や、今後の展望についても紹介します。

将来を見据えたスキルアップやキャリアアップを目指しているフリーランスや個人事業主の方は、ぜひ参考にしてみてください。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の背景と目的

これまで、リ・スキリング支援事業の対象者は会社員や離職者(雇用保険に加入していた人)が中心でした。今回紹介する「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」では、対象をフリーランスや個人事業主など、雇用保険に加入していない人に拡大しています。

リ・スキリングとは? 必要とされる背景

まずはじめに、リ・スキリングの普及を図る背景や目的について解説します。

経済産業省が2021年2月26日に行った〈第2回 デジタル時代の人材政策に関する検討会〉では、リ・スキリングを「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」(※)と定義づけています。

※引用:リスキリングとは―DX時代の人材戦略と世界の潮―(2021年2月26日)

近年、企業のビジネスモデルや従業員に求められるスキルは大きく変化しています。その理由のひとつに、急速に進む経済のグローバル化や経済環境・労働市場の変化、DXなどがあり、多くの企業は、リ・スキリングによって従業員の能力開発を図り、必要なスキルを持った人材を確保しようとしています。

加えて、終身雇用制度が崩れ、転職が当たり前になる中、転職に必要なスキルや社内で生き残るためのスキル開発を求める労働者も少なくありません。

高齢者の就業率が高まったことも、より長く働くためのリ・スキリングが必要とされている要因です。

こうした背景もあり、政府は企業や労働者のリ・スキリングを積極的に支援しています。また、リ・スキリングは技術革新や生産性向上、経済成長や少子高齢化による人手不足解消といった効果も期待されています。

さらには、IT業界をはじめとする人手不足が顕著な分野での人材育成も、リ・スキリングを支援する目的のひとつと言えるでしょう。

しかし、日本における人材への投資や個人の自己啓発は、諸外国と比較して遅れているのが現状です。

リ・スキリングに対する関心は高まってきていますが、具体的な効果や方法の理解が進んでいない、リ・スキリングにあてる時間や費用が準備できないといった理由で、企業も個人も積極的に取り組むという状況にはいたっていません。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の目的

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業を新設した目的は、フリーランスや個人事業主のリ・スキリングを促すことです。

これまでのリ・スキリング支援策は、会社員をはじめとする雇用保険加入者を対象とするものが中心でした。たとえば、雇用保険加入者を対象とした「教育訓練給付制度」や、雇用保険適用事業所の事業主に対する「人材開発支援助成金」などです。

しかし、より市場や顧客ニーズの変化によって大きな影響を受けやすいのは、収入や経営状態が不安定なフリーランスや個人事業主と言えるでしょう。

国内の競争力向上や事業の多角化を進めるためには、フリーランスや個人事業主がリ・スキリングによって新たな知識やスキルを身につける必要があります。

従来のリ・スキリング支援策の対象者は、会社員をはじめとする雇用保険加入者に偏っており、フリーランスや個人事業主は、企業によるリ・スキリング支援の対象外でした。

そのため今回、フリーランスや個人事業主をはじめとする、雇用されていない人に対する支援策として「リ・スキリング等教育訓練支援融資事業」が設けられました

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の対象者と要件

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の対象者は、次の要件をすべて満たす人です。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の対象者
  • 求職者支援法(※)に定める「特定求職者」であること
  • 通算3年以上の就業経験があること
  • 融資申込時年齢が18歳以上、融資開始時年齢が満66歳未満、最終返済時の年齢が満76歳未満であること
  • ※正式名称:職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律

「特定求職者」とは次の要件をすべて満たす人です。

特定求職者
  • ハローワークに求職の申し込みをしている
  • 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でない(会社員や失業保険の受給者でない)
  • 労働の意思と能力がある
  • 訓練受講が必要とハローワークが認めた

※参照:厚生労働省「教育訓練受講のための新たな融資制度について」

具体的な対象者は、年齢要件を満たす、3年以上の就業経験があるフリーランスや個人事業主、離職中の人(雇用保険を受給していない人)、主婦などです。

こうした対象者が、ハローワークにて「求職の申し込み」を行い、「労働の意思と能力あり」「訓練受講が必要」と認められれば、特定求職者となり、融資の受給要件を満たせます。

「求職の申し込み」とは、ハローワークに「求職申込書」を提出することです。求職申込書には、基本情報である氏名や住所、希望する仕事内容・勤務条件・勤務時間、職歴などを記載します。求職の申し込みは、ハローワークの窓口のほか、ハローワークインターネットサービスでも手続きが可能です。

※参照:ハローワークインターネットサービス「求職申込み手続きのご案内」

「労働の意思と能力あり」とは、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力がある状況です。病気や育児で仕事ができないといったケースでは、「労働の意思と能力あり」と認められません。

また、「訓練受講が必要」と認められるのは、次のようなケースが考えられます。

「訓練受講が必要」と判断されるケース(例)
  • 未経験の職種に就くために新たな知識やスキルが必要
  • キャリアアップのために保有するスキルのレベルアップが必要
  • 労働の意思と能力がある
  • 専門性の高い資格取得や最新技術の習得が必要

ただし、上記の条件をすべて満たしても、求職者支援資金融資や職業訓練受講給付金の受給者は、リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の対象にならないため注意が必要です。

なお、求職者支援資金融資や職業訓練受講給付金には年収制限がありますが、リ・スキリング等教育訓練支援融資事業にはありません

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の融資内容

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業は、給付金制度ではありません。あくまで融資事業であるため、教育訓練の終了後に返済が必要です。ここでは、主な融資内容について解説します。

融資の上限額・取り扱い

融資対象は、「教育訓練費用」と「生活費用」の2つです。教育訓練中に仕事ができず収入が無くなる場合は、生活費用を合わせて教育訓練費用の融資を受けられます。

教育訓練費用と生活費用に対する融資上限は、それぞれ月10万円(年間120万円)です。

融資は最大2年間受けられますが、年収200万円未満の人や離職者については最大1年間に制限されます。融資の主な取り扱いは次のとおりです。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の融資内容
貸付利率 年2.00%
(信用保証料0.55%を含む)
担保・保証人 不要
返済期間 教育訓練修了後から1年間(据置期間)経過後、10年間以内
返済方法 元利均等方式
(据置期間中は利用残高に応じた利息支払いのみ)

教育訓練費用は、受講機関の入学金や授業料、教科書費などが対象で、融資は3カ月ごとです。ハローワークが事前に訓練状況や訓練継続の意思確認をしたうえでの支給となります。

融資の対象となる教育訓練

融資の対象となるのは、以下の3つの教育訓練です。

教育訓練を始める前にハローワークで「キャリアコンサルティング」を受け受講内容を決定します。教育訓練期間が1カ月未満のものは対象にならないため注意が必要です。

融資の対象となる教育訓練
  • 学校教育法に基づく大学、大学院、短大、高専、専修学校または各種学校が行う教育訓練
  • 教育訓練給付金の指定教育訓練実施者が行う教育訓練
  • 求職者支援訓練または公共職業訓練

教育訓練給付金の指定教育訓練実施者が行う教育訓練

「教育訓練給付金の指定教育訓練実施者が行う教育訓練」とは、雇用の安定・就職の促進に役立つもので、講座実績をはじめとする一定要件を満たす講座のことです。

講座指定は厚生労働大臣が行い、以下のような資格取得を目指します。

受講する講座を探すときは、厚生労働省の検索システムを活用しましょう。分野や資格、受講する地域や期間といった条件を入れて検索できます。

※参照:厚生労働省「教育訓練給付制度 厚生労働大臣指定教育訓練講座 検索システム」

求職者支援訓練または公共職業訓練

「求職者支援訓練または公共職業訓練」は、ハローワークが実施する職業訓練で「ハロートレーニング」と呼びます。

求職者支援訓練は、雇用保険を受給できない人が対象で、訓練期間は最大6カ月間です。公共職業訓練は、雇用保険受給者を対象に行われ、最大2年間の訓練を受けられます。

国の職業能力開発促進センター(ポリテクセンター)や都道府県の職業能力開発校のほか、厚生労働大臣が認定した民間教育訓練機関などが訓練を実施します。

訓練内容については、ハローワークインターネットサービスの検索システムで確認しましょう。

※参照:厚生労働省「ハロートレーニング(離職者訓練・求職者支援訓練)」
※参照:ハローワークインターネットサービス「職業訓練検索・一覧」

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業では、大学・大学院の講座や約16,000講座あると言われる教育訓練給付の指定講座など、幅広い分野の知識習得、資格取得が目指せます。

インセンティブ措置

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業では、融資の返済についてインセンティブ措置が設けられています。

教育訓練実施後に賃金がアップした場合、返済金額を減額する措置です。賃金の上昇率に応じ、未返済の債務(残債務)は次の割合で減額されます。

  • 賃金が5%上昇したとき:残債務の30%(上限100万円)
  • 賃金が10%上昇したとき:残債務の50%(上限150万円)

対象となる教育訓練は、教育訓練給付金の指定講座と求職者支援訓練、公共職業訓練です。

大学での教育訓練は対象外となるので注意しましょう。また、融資対象者本人の年収が融資時点で500万円以上の場合も対象外です。

賃金の上昇率を計算するときは、教育訓練前の賃金と教育訓練後の賃金をケース別に次の期間で算出します。

賃金上昇率の計算期間

教育訓練前 教育訓練後
フリーランスが会社員になった場合 訓練開始までの12カ月 再就職後の12カ月
離職者が再就職した場合 離職前までの6カ月 再就職後の6カ月
在職者が雇用保険の被保険者になった場合 訓練開始前までの6カ月 訓練修了後の6カ月

※教育訓練後の期間については、再就職後(または訓練終了後)2年以内の任意の12カ月(または6カ月)です。

インセンティブ措置の対象となるのは、教育訓練後に安定した雇用(雇用保険被保険者として1年以上の雇用継続)につながった場合のみです。

教育訓練後にフリーランスや個人事業主として仕事をする場合、融資は受けられますがインセンティブ措置は適用されません。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業の位置付けと実施主体

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業は、求職者支援法(正式名称は「職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援に関する法律」)に基づく求職者支援事業のひとつです。

求職者支援事業は、失業保険をはじめとする雇用保険法に基づく給付金や、教育訓練給付が受けられない特定求職者が対象者となります。求職者支援事業の財源は、労使折半の雇用保険料と国庫負担(27.5%・本則は50%)です。

求職者支援事業は、フリーランスや個人事業主、雇用保険の給付が受けられない人を対象にした以下の支援が実施されます。

  • 職業訓練の実施
  • 職業訓練受講給付金の支給
  • 就職支援計画の作成などの就職支援

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業を含む「求職者支援事業の融資」の実施主体は労働金庫で、融資の審査・実行・回収を行います。

労働金庫とは、労働組合や生活協同組合などの労働者が資金を出し合って設立した、協同組織の福祉金融機関のことです。

ただし、職業訓練や融資相談の受付や、融資制度の案内、教育訓練実施前のキャリアコンサルティング、インセンティブ措置の審査は、ハローワーク(公共職業安定所)が行います。

既存の支援制度との比較

求職者支援事業では、以前より職業訓練受講給付金の支給に加え、受講中の生活費支援を目的とした求職者支援資金融資を行っています。

そのため、給付金の受給要件と融資を受ける要件は異なりますが、給付金の支給と融資を同時に受けることも可能です。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業と既存制度の違いは次の表のとおりです。

リ・スキリング等教育訓練支援融資 求職者支援資金融資 職業訓練受講給付金
目的 リ・スキリング費用と教育訓練中の生活費支援 職業訓練中の生活費支援 職業訓練の受講費支援
支援内容 融資 融資 給付金
対象者 特定求職者 特定求職者 特定求職者
収入要件 なし 本人:月8万円以下
世帯:月30万円以下
本人:月8万円以下
世帯:月30万円以下
最終返済時の年齢要件 満76歳未満 満66歳未満 なし
融資上限 教育訓練費:月10万円
生活費:月10万円
配偶者あり:月10万円
単身者:月5万円
職業訓練受講手当:月10万円など
制度の併用 既存制度との併用不可 職業訓練受講給付金と併用可 求職者支援資金融資と併用可
対象となる教育訓練 ・大学などが行う訓練
・教育訓練給付金の指定講座
・求職者支援訓練または公共職業訓練
求職者支援訓練または公共職業訓練 求職者支援訓練または公共職業訓練
インセンティブ措置 あり なし なし

リ・スキリング等教育訓練支援融資と既存制度の大きな違いは、対象となる教育訓練の内容です。

リ・スキリング等教育訓練支援融資事業では、雇用保険加入者が受講する教育訓練給付金の指定講座も受けられます。また、年収要件がないことや、インセンティブ措置があることもメリットです。

ただし、職業訓練受講給付金も返済不要の給付金であるのに対し、リ・スキリング等教育訓練支援融資は返済をする必要があります

指定講座の受講費用についても、教育訓練給付金では、雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者が最大80%の給付金を受け取れるのに対して、リ・スキリング等教育訓練支援融資では返済をしなければなりません。

このように、求職者支援訓練や公共職業訓練を受講しつつ、生活費の融資を受けられる制度には、それぞれメリット・デメリットがあります。

制度の特徴をくらべながら、リ・スキリング等教育訓練支援融資を受けるか、それとも求職者支援資金融資と職業訓練受講給付金を併用するか、慎重に検討していきましょう。

※参照:職業支援・給付金などについて知る|ハロトレ特設サイト|厚生労働省
※参照:求職者支援資金融資のご案内

リ・スキリング今後の展望と期待

リ・スキリングは個人の能力を高め可能性を広げるとともに、キャリアアップにつながる可能性もあります。具体的には以下の効果が期待できるでしょう。

  • 職業選択の幅が広がる
  • 収入がアップする
  • 雇用が安定する

リ・スキリングによって習得した知識やスキル、資格を上手に活用すれば、リ・スキリング前は選択肢になかった職業に就ける可能性があります。好きな仕事や能力を活かした仕事も選択できるようになり、充実した職業生活を送れるでしょう。

また、企業が求める知識やスキルを持つことで、労働市場での価値が高まり収入アップも期待できます。

企業にとっても、リ・スキリングは雇用の安定にもつながるでしょう。IT技術の進歩や経済状況の変化が加速するなか、これまでの知識やスキルが役に立たなくなることもあります。変化に対応するためには、常に新しいスキルを身につけておくことが有効です。

フリーランスや個人事業主の将来性

フリーランスや個人事業主として働く場合も、販売する商品の品質を高め、独創的なアイデアを創出できれば、競争力の高いサービスの提供が可能になり、収益アップが見込めるでしょう。

たとえば、以下のようなケースも考えられます。

  • Webデザイナーが、UI/UXデザインやWebマーケティングのスキルを習得し、より上流の工程や戦略設計に関わる
  • ライターが、SEOライティングや動画コンテンツ制作のスキルを習得し、より幅広い案件に対応する
  • プログラマーが、AIやデータサイエンスのスキルを習得し、より高度な開発案件に挑戦する

フリーランスや個人事業主が行う仕事は、さまざまなスキルを持つ専門家の連携によって完成することが少なくありません。異なる分野の仕事も、リ・スキリングによって能力を習得できれば、活躍の場がさらに広がるかもしれません。

加えて、フリーランスでの経験と技術が、新たな雇用につながるケースも考えられます。リ・スキリングによって能力の専門性を高め、業務の幅を広げられれば、働き方の選択肢も広がり、将来の安定にもつながるでしょう。

まとめ

フリーランスや個人事業主などのリ・スキリングを支援するためのリ・スキリング等教育訓練支援融資事業が2025年10月からスタートします。

技術革新や生産性向上が期待できるリ・スキリングは、経済成長や人手不足解消においても期待されており、リ・スキリングの支援事業も、企業や会社員を中心に関心が高まってきています。

一方、経済環境や市場の変化に対応するためには、フリーランスや個人事業主も、新しい知識やスキルが不可欠です。リ・スキリング等教育訓練支援融資事業をはじめとするさまざまな支援制度を有効に活用して、キャリアアップを図りましょう。

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