フリーランスは、自分の特性を活かした方法を選ぶべき

そもそもネガティブなポストをしている人に、仕事を発注したくはなりませんからね。ちなみに、困ったときにコレを見れば良いとか、これを勉強すればいいと勧めたいものはありますか?
そうですね。いにしえのインターネットには「半年ロムれ」という言葉がありましたが(笑)。SNSにしてもWebサイトにしても、その場の雰囲気というものがあるはずなんですよ。
例えば、Facebookの空気感のままXに来たら、たぶん火傷する。なので、「半年ロムれ」じゃないですけど、この場所ではどういった文脈で盛り上がっているのか?というところを、観察して把握することは大事かなと思いますね。
それこそ成功している同業者が、どんなやり方をしているのかを、観察してみても良いかもしれませんね。ここまでSNSについて伺ってきましたが、では、SNSに限らず仕事全般においての、フジワラさんの根本的なポリシーって何でしょう?
私、基本的に面倒くさがり屋なんですよ。出不精で、人と会ったり話したりするのも得意ではないですし、前職のときも足で稼いで営業するのは、すごくしんどかったんです。だからSNSで自分を売り込んでいく方法を選んだんですね。
イラストレーターでやっていくなら、東京の出版社さんが売り込むのが一般的なのはわかってましたけど、神戸に住んでいる私にとっては時間がかかりますし、その時間のぶん何かしら価値が生み出せるのかといえば生み出せない。つまり、自分にとって一番楽な方法を選んだんです。
要するに、自分の特性を活かした方法を選ぶべきだと。
そうです。だから人と会うのが好きな人なら、むしろ従来の足で営業するやり方のほうが全然いい。実際に対面することで、人柄も含めてアピールしていける人もいるでしょうから。
でも、私の場合だと第一印象は良くても、会えば会うほど評価が下がっていくんですよ。本にも書いた通りADHDの特性があって、物を失くしたりとか、借りたものを返さないとか、自分では脳の特性として理解していることでも、定型発達の人からすると「非常識なやつ」にしかならないことをやってしまうんですね。なので、人と繰り返し会って評価を積み重ねていくスタイルより、ある程度自分を控えていったほうが評価は上がりやすい。だから、コロナ禍以降も人と会わずに済むSNSを使っているんです。
これはセンシティブな話になるかもしれませんが……そういう特性を持っていて、会社員としてやっていくのが難しいからフリーランスを選ぶ方も、少なからずいらっしゃいますよね。なので、そこを活かそうと言っていただけると、とても心強いです。
やっぱり自分を知ることが、何より大事なんですよね。自分に何ができて、何ができないのか? それを理解できていないがために、しんどくなってしまう人が少なくない気がするんです。
できないのに「できる」と言ってしまって、結局できなかったときが一番しんどいですから、それなら「私はできません」と言ってしまったほうが全然いい。自分のできること、できないことをすべて受け入れてあげて、そこから「じゃあ、どうするのか?」を考える必要があるんじゃないかと思うんです。
例えば、私は深夜になると変に脳が覚醒してしまうタイプだから、朝起きなければいけない会社員をやっていると、睡眠不足になってしまうんですよね。それも、時間が自由になるフリーランスを選んだ理由なんです。
自分の性質を客観的に見極め、分析することが、いかに大事か?という話ですよね。
ですね。あと、とにかく大事なのが寝ること!
たとえ寝る時刻は固定できなくても「眠たくなったら寝る」を実践していくことで、精神面もフィジカルも安定してくるんです。なので、たとえ納期が迫っていたとしても、眠くなったら寝たほうがいい。寝てスッキリした状態で作業を再開したほうが、絶対に効率上がるので、ヤバいときこそ寝たほうがいいと思います。
できないことで無理しない、「好き」を曖昧にしない

そんなこと言っていられないくらい、タイトなスケジュールになることはないんですか?
ないですね。基本的に余裕を持って発注されますし、もし、そんなにタイトなスケジュールが組まれたとしたら「すいません、無理です」って断ります。
そもそも今は、できるだけクライアントワークを減らそうとしているところで、本当に仕事していない状態なんですよ。
なぜクライアントワークを減らそうと?
絵を勉強していって技術が上がってくると、逆に、過去の絵をどんなふうに描いていたのか、自分でもわからなくなってしまうんですよ。だけど、クライアントさんは「このときの、こういうタッチで描いてください」というふうに過去の絵を元に発注をくださる。でも、そのタッチって自分からすると、単に未熟で下手なだけだったりするんです。
そこで無理して言われた通りに描くのは、自分の本意に反してしまうことになりますし、「もっと絵が上手くなりたい」という絵描きとしての矜持を優先するためにも、いったんクライアントワークからは距離を置こうかなと。
クライアントワークから距離を置いて、そのぶん減ってしまった収入は、何で補っているんでしょうか?
例えばnoteでの情報発信であるとか、それこそ今回の書籍の出版もそうですよね。さっきもお話しした通り、どんどん信用の貯金を減らしていくタイプの人間なので、信用貯金が無くなっても収入を確保できる方向にシフトしたいということです。
本当に、メールの返事もまともにできなくて。よく「フリーランスはレスポンスが早くないといけない」とかってことが常識として語られるけど、私にとっては苦手どころか“できない”レベルなので、妻にお願いしていたりするんです。でも、そこが自分のバリューでは絶対にないはずですし、そんな苦手なことを頑張るくらいなら、得意なことでカバーできるようにしたい。
信用貯金の目減りによってクライアントワークが減っていったら、それ頼りの働き方では続けられなくなるので、一番の武器である“作品力”を最大化・先鋭化していくことが必須なんです。歴史上の「巨匠」と呼ばれる人たちだって、結局はそれぞれにトンがっているところを先鋭化させていった結果でしょうからね。
自分の特性による未来予想図を元に、今、またシフトチェンジしているんですね。
そういうことです。自分の至らなさで信用貯金を減らしていく人って、フリーランスには絶対に多いはずなんですよ。だって、そのへんクリアできるなら、普通に会社員でやっていけるじゃないですか。
じゃあ、私たちみたいなタイプが、どうやったら社会的に生き残っていけるのか?ってことを考えると、従来とは違うフレームワークを考えていくしかないんですよね。
そこで変に格好つけたり、周りの人間の言うことに流されていては、結局しんどい想いをするだけ。なので、自分にとって都合のいい戦い方を考えた結果、あえて戦わないっていうのも大事だなと思います。
それは本書にも書かれていましたね。「できないことからは思い切って撤退しよう」と。
できないことを無理してやろうとしても、人に迷惑かけるだけですからね。
私もストーリー性のあるイラストを描くのって大変で、時間もかかるし結構しんどいんです。だけどフジワラヨシト名義でのアカウントでは、ちゃんとした作品じゃないと載せたらいけないような空気感があって、じゃあ、気軽に絵を上げられる場を持とうと、最近“絵を描く人”っていう別アカウントを作ったんですよ。
そちらではひたすらに絵を描いてアップするということをしていて、それも1時間もかかっていない街角のスケッチとかだから完成度は低いのに、メチャクチャたくさんの人に見ていただけて「おかげで絵が描きたくなった」なんていうコメントいただくんです。
こんな感じでスケッチしてる pic.twitter.com/z3Qaqjsg3t
— 絵を描く人 (@Mo1HNumjeU45057) May 8, 2025
イラストは何十時間もかけて素敵な作品を創り上げるものという価値観があって、その中で戦わなきゃいけないと信じていたけれど、別に無理してそこで戦う必要もないんだなと。
それに付随して「好き」を仕事にするのなら、ちゃんと好きなものを自覚する必要があるんだということも言いたいです。私は絵を描くのが好きで、電車に乗っていても、ご飯を食べに行っても、テーマパークで並んでいても、ずーっと絵を描いてるんですよ。
あと、いろんなことを考えたり言語化するのも好きなので、今、こういう働き方をしていますが、多くのフリーランスの人を見ていると、実は好きじゃないものを「好きだ」と思い込んでいるような気がするんですね。
例えば、なんとなく「絵が好き」な気がしてイラストの仕事をしていたけれど、本当は食べるのが好きで、その美味しさを伝えることが好きなだけかもしれない。だから、自分の「好き」を曖昧にせずに、ちゃんと突き詰めていって、その上で「好き」を仕事にしていく方法を考えたほうがいいと思うんです。
なるほど。最初に「SNSを運用するなら目的を明確に」というお話がありましたが、そこで迷ってしまうとしたら「好き」を突き詰めていない証拠なのかもしれません。
そうですね。何が好きなのか、本当のところがわかっていない。私も絵を描くのは好きだけれど、じゃあ、なんでしんどくなるときがあるんだろう?って考えた結果、私は創った作品に価値を持たせることが好きなのではなく、作品を作るという過程自体が好きなんだと最近気づいたんです。おかげで働き方の方向転換にも繋がったので、やっぱり無理しちゃダメなんですよ。できないことをしちゃダメだし、寝ないのもダメ。心にも身体にも悪いですから。
例えば、私は物を失くしまくるタイプの人間なので、失くしたものを探しても仕方ない。無理して治そうとか、平均に近づけるように頑張ろうとすると、きっとストレスになるんです。それなら新しく買ったほうが早いじゃないですか。自分の武器を研ぎ澄ませていって、失くしたら買えるだけの収入を得られるようになればいいんですよ(笑)。

撮影/中野賢太(@_kentanakano)
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