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夫は共同経営者で、子どもはお客様。エッセイスト・下田美咲が『株式会社 夫婦』で描く、令和の新しい家族のかたち

夫は共同経営者で、子どもはお客様。エッセイスト・下田美咲が『株式会社 夫婦』で描く、令和の新しい家族のかたち

noteでの売上は累計3億円、Xで1億viewを獲得――そんな「武勇伝」を枕に登場した下田美咲さんの新刊は、初のエッセイ集となる『株式会社 夫婦』(サンクチュアリ出版)です。

タイトルから、家族マネジメントを企業になぞらえたハウツー本だと思いきや、読み始めるとすぐにその固定観念が裏切られる本書。冒頭から夫婦の力関係を描いて読者を圧倒したかと思えば、妻である下田さんの想像の斜め上をいく夫「なおくん」の成長ぶりに驚かされます。さらには、家事や育児がパートナーへの嫌悪感を生むと指摘し、令和の夫婦の在り方にまで深く踏み込んでいく展開も。

12歳でエッセイストを志し、夢への近道としてティーンモデルやタレントなどで活躍してきた下田さん。今回の取材では、書くことへの愛着やエッセイをめぐる想いを赤裸々に語っていただきました。

profile
下田美咲(しもだみさき)
1989年生まれ。エッセイスト。恋愛・夫婦・育児・性などをテーマに、固定観念にとらわれない独自の視点で発信を続ける。noteの累計売上は3億円を超え、これまで何万件もの恋愛・夫婦相談が寄せられてきた。率直で本質を突く語り口から、根強い支持を集めている。
幼い頃は結婚は人生の墓場だと思っていたが、現在は「結婚が人生の墓場ではない可能性を見出したい」をモットーに、自身の結婚生活を実験の場として検証し続けている。その試行錯誤や夫婦の距離感の調整を赤裸々に言語化するスタイルが共感を呼び、Xでもたびたび大きな反響を呼んでいる。二児の母であり、執筆一本で家族を支える大黒柱。「結婚とは」「夫婦とは」という問いを探究し続けている。
https://x.com/shimodamisaki
https://www.instagram.com/shimodamisaki815/
https://note.com/shimodamisaki

12歳で決意した「エッセイストの座」。夢への最短ルートが芸能界だった

エッセイスト・下田美咲

“タレントになったら本が書けると思った”と公言されていますが、その理由を教えてください。

12歳のときに読んだ、さくらももこさんのエッセイ『もものかんづめ』(1991年/集英社)がきっかけです。『ちびまる子ちゃん』では「いいおじいさん」として描かれている、(さくら)友蔵の暴露話は有名ですよね。それがすごく面白いし、大ヒットしていたから、“エッセイって、あらゆる嫌なことをネタにしてお金に昇華できる手段なんだ!”と気づいたんです。

当時の私の人生にもクソジジイがいたし、いろんな魔物が潜む「魔界暮らし」でした。でもエッセイストになれば、そんな嫌な出来事もすべて「結果オーライ」に持っていけますよね。だからこそ、「エッセイストの座」をなんとしてもつかみ取りたかったんです。

ちょっと待ってください、12歳ですよね?

12歳です。子どもながらにエッセイストになる方法を調べてみたところ、まずは何かの分野で一旗揚げてからエッセイを書く人が多いと気づいたんです。当時はネットではなくテレビ全盛の時代だったので、私にとって一番現実的な近道は、芸能人になることでした。

モデルやタレントのお仕事を実際に掴んだことも驚きますが、“絶対いつか本を書いてやる!”と思い続けてきたということですよね。

少しでも機会があれば“文章を書く仕事がしたい”とアピールし続けていたので、親にはよくたしなめられていました。ずっとエッセイ本を出したかったのですが、本を書けるチャンスがあってもハウツー本しか出せなくて。本を出せば出すほど、エッセイは企画会議にかけてもらうことすら難しく、なかなか通らないんだという厳しい現実がわかってきたんです。

この『株式会社 夫婦』で長年の夢が叶ったんですね。

まだ若くて可愛いうちにエッセイストになれたことが、自分でも驚きでした。“間に合った!”みたいな(笑)。エッセイストの座を掴むまでにこんなにかかるのかって感じですが、本当に嬉しかったです。むしろ、サンクチュアリ出版さんのほうから“エッセイでいきましょう”と言ってくれたことには、すごく驚きましたね。

間に合いましたね。12歳からアグレッシブに努力と行動を重ねてきた方だということがすごく伝わって、こちらまでうれしくさせる下田さんのパワーがすごい(笑)。

(笑)。これで“エッセイストは最高だ”と名実ともに言えるようになりました。エッセイストって、シニアになってからや、それこそ死後にようやく評価されて脚光を浴びるパターンもあると考えていたので。

日常で何かが起きても、全部エッセイに書けると思っているから、それほど嫌じゃないんです。“来たぞ書けるやつ来たぞ、大物来たぞ!”と捉えて、その出来事をどう線でつないで文章にするかをずっと考えています。

出版を目指して1年半の猛アプローチ。ついに叶った『株式会社 夫婦』の舞台裏

エッセイスト・下田美咲

念願のエッセイ本刊行に至った経緯を教えてください。

どうしてもサンクチュアリ出版から本を出したくて、1年半ほどアプローチを続けていたんです。その甲斐あって、ある編集者の方を担当として指名していただきました。ただ、最初はその担当編集さんとの関係性がまったく築けていなくて。企画が立ち上がらないまま半年ほど経ってしまったため、私の方から“腹を割って話しませんか”とお声がけしました。

チャンスを逃さないために、やはり行動して、まずは話をすることからスタートしたんですね。

担当編集さん自身が「ど真ん中の読者」になる本を作るのが私の理想なので、まずはご本人の悩みをたずねました。そうしたら“結婚が怖い”とおっしゃるので、それなら結婚が怖くなくなる本を作りましょう、と企画が立ち上がったんです。

結婚を人生の墓場だと考える人に向けた原稿はすでにあったので、いくつかピックアップして送りました。それを読んだ担当編集さんが企画書をまとめてくださって。

私の原稿には「夫婦運営」というキーワードがよく出てくるんですが、企画書でも見出しとしてたくさん使われていたんですね。そこから社内で『株式会社 夫婦』と名づけてくれました。

ご自身のテーマが、第三者の視点で立体化された感覚って、どんなものでしたか?

この本の企画書は初めて心からしっくりくるもので、これまでは“自分のセルフプロデュースを超えられないし、これじゃnote以下になっちゃうな……”と感じる提案ばかりだったんです。だからこそ、客観的な視点で私以上に「下田美咲」らしい企画書を作れる人が存在することや、自分では思いつかないほどふさわしいタイトルをもらえたことに感動しました。