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やる気が続かない! 目の前の仕事を「先延ばし」しないための工夫とは。外山美樹『すぐやる人の頭の中 心理学で先延ばしをなくす』インタビュー

自由度が高く、自分の裁量で仕事をコントロールできるフリーランスだからこそ、ついつい「まだ大丈夫」と先延ばしにしてしまい、〆切ギリギリになって慌てた経験のある方は多いのではないでしょうか。

筑波大学で教育心理学の教授を務め、モチベーションについて20年以上研究してきた外山美樹さんが上梓された『すぐやる人の頭の中 心理学で先延ばしをなくす』は、そんな人にこそ読んでほしい1冊。心理学の見地に基づき、やる気に頼らずに行動し、目標を達成するための実践的ヒントがあふれています。

「強い意志さえあれば、なんでもできる」は幻想である――そう言い切れるのは何故なのか? 「すぐやれない人」は、どんな工夫をすればいいのか? フリーランス必聴のお話を、たっぷりとうかがいました。

profile
外山美樹(とやまみき)
1973年生まれ。筑波大学大学院博士課程心理学研究科中退。博士(心理学)。筑波大学人間系教授。専門は、教育心理学。著書に、『勉強する気はなぜ起こらないのか』(筑摩書房)、『行動を起こし、持続する力──モチベーションの心理学』(新曜社)、『実力発揮メソッド──パフォーマンスの心理学』(講談社)、共著に『やさしい発達と学習』(有斐閣)、『ワードマップ ポジティブマインド』(新曜社)などがある。
https://www.toyamamikilab.com/

心と行動のズレに対する違和感を解き明かしたい

まずは外山さんが心理学だったり、その中でも特にモチベーションというところに興味を持ったきっかけから教えていただけますか?

高校生のときに、同じ人間であっても人それぞれに考え方や行動に違いがあるのはなぜだろう?と思うことがあって、その仕組みだったりメカニズムを知りたいと考えたのが、大学で心理学を専攻したキッカケです。

例えば、やらなきゃいけないと頭ではわかっているのに、ついつい後回しにしてしまうとか、やる気はあるのに3日坊主で終わってしまうことってありますよね。私自身、何かをやろうと決めて計画を立てるのは好きなのに、その意欲をなかなか行動に移せないんです。

いわゆる夏休みの最後に慌てて宿題をする、みたいな状況になってしまうんですね。そんなふうに思った通りに動けない人間というのは、自分だけでなく周りにもすごく多かったので、そういった心と行動のズレに対する違和感を解き明かしてみたいと考えたんです。

その研究成果を1冊にまとめられたのが本書『すぐやる人の頭の中』なわけですが、拝読させていただいて個人的に最も衝撃だったのが「自制心とは有限である」という一文だったんです。自制心を働かせて自分をやるべきことに向かわせるためには、こころのエネルギーが必要であって、それは使いすぎると枯渇してしまう、と。根性論がはびこっている日本では、気合いで何でもできると言われがちなので、やる気の続かない自分を責める必要はないと書かれていて本当に安心しました。

おっしゃる通り、昔は人間の内面の力さえあれば行動できると考えられていましたけれど、最近はそうではないということが心理学の分野では証明されてきているんですね。人間の内面にある“やる気”に頼らずとも、自然に行動できる仕組みを外側に整えることこそが、実行力を高める鍵になるということがわかってきているんです。

なので、意志が弱いから行動できないという考え方を手放して、自分を責めずに先延ばしを防ぐためには工夫が大事なんだということを、伝えたいと思ったんです。

そんな時に、具体的にどうすれば行動を先延ばしせずに自然と動けるようになるのか?をテーマにした書籍を出したいとお声がけいただき、編集者とも相談しながら1冊に仕上げたのが、今回の『すぐやる人の頭の中』なんです。

その実践的知識を1日1テーマの7日間で学ぼうということで、本書は全7章に章立てされていますが、各章とも前半は実例も挙げることで読者の共感を呼び、十分に引き込んでから後半の心理学的見地につなげるという構成が非常にわかりやすくて、これも心理学的な工夫なのかと感心しました。

そこは編集を担当してくださった斉藤さんのアドバイスのおかげですね(笑)。やらなければいけないとわかっていて、頑張りたい気持ちもあるのに行動できないという悩みは、年齢や職業に関わらず多くの方が共通して抱えているじゃないですか。なので、執筆の際にも中学生・高校生から社会人まで幅広い方々が気軽に、特定の専門知識を前提としなくても読めるように心がけました。

まずは習慣づけと“強化”、理想とのギャップを意識する

つい先延ばししてしまう人は、どんな工夫が有用なんでしょうか?

先ほども言いましたように、そこで意志の力を使うと、こころのエネルギーが枯渇してしまうので、自然と取り組める仕組みが大事なのかなとは思っています。

この本の中でも書かせてもらいましたが、例えば「明日の10時になったら机に向かって報告書を仕上げる」みたいに、具体的に計画を立てておくと比較的行動しやすいという研究結果は出ているんですね。

逆に「〇〇までに仕上げればいい」みたいに漠然と考えてしまうと、なかなか取り組むことができない。なので何かしら計画を立てて、自分を自分で動かせるような仕組み作りが大事なのかなとは思います。

“計画”と聞くと、何かすごく大仰なものを想像してしまいがちですが、そんなシンプルなことでいいんですね。

そうです。朝起きたら10分間ストレッチをするとか、仕事が終わったらすぐに机の上を片付けるとか、本当にシンプルな計画でいいんです。いつ、どこで、何をするのかをあらかじめ決めておくだけで動きやすくなるというのが、心理学の研究で実証されているんですよね。

例えば私の場合、大学に出勤して最初の1時間は、報告書を作るといった事務仕事をすることに決めています。自分の中で比較的面倒に感じることは先に済ませて、午後は好きなことに充てるという“ご褒美”を用意しておくというか(笑)。そうやって習慣づけることが、先延ばしを防ぐ一番手っ取り早い方法なのではないかと個人的には考えているんです。

それでも思い通りにならないことってありません……?

もちろん、あります。でも、それはそれでいいのかなと。どうしても体調が悪いときとか、全然やる気が出ないときもありますからね。そういうときは、いつもは1時間やるけれど今日は5分だけにしようとか、ハードルをグッと下げるんです。習慣づけるには続けることが一番大事なので、5分も無理なら資料を開くだけでもいいから、とにかく何かをする。

あと、やる気が湧いてきたら行動に移すというふうに考えている方も多いかもしれませんが、逆に、行動しているうちにやる気が出てくることもあるんです。なので、1分でも2分でもいいから、とりあえずやってみると、意外に続けられたりもするんですね。最初は机に向かうのも億劫だったけれど、行動しているうちにやる気がついてくるということは、自分の経験でも多いように感じます。

「少しだけ」とやり始めたら、結局最後までやってしまったという経験は私にもあります。ただ、本当に億劫に感じていることだと、その「少しだけ」にすら到達することが難しいんですよね。

でしたら、その億劫なことを朝一番にやるお仕事として決めるとか、あるいは、それを終えられたら自分なりのご褒美を与えることにしておくんです。心理学で“強化”と言うんですけれど、行動と報酬をセットにすることでモチベーションが維持されやすくなることが証明されているんですね。いわば、自分の脳をちょっとした飴で手懐ける感覚というか、意欲とやる気を外側から支えるイメージですね。

私の場合は甘いものが大好きなので、コンビニスイーツをご褒美にしていますが、それぞれ好きなものをご褒美にすればいいんです。例えば音楽が好きな人なら曲を1曲聴くとか、マンガを読むとかでもいい。自分が好きなことをやると、やっぱり脳の活性化にもつながるでしょうから。

億劫なことを先にやるように習慣づける、ご褒美を用意する。それ以外にも、もし、モチベーションを保つ秘訣があれば、ぜひ教えていただきたいのですが。

本書の2章で書いた心的対比(メンタル・コントラスト)もよく使いますね。私はポジティブなことばかり考えがちな人間なので、目標を達成したときのことを想像するだけで楽しくなったり、満足してしまいがちなんですよ。

でも、特に困難な目標に対しては、達成したあとのポジティブな未来を思い描くだけでなく、自分が失敗する可能性や、達成に至るまでに直面するだろう困難や障害についても必ず考えるようにしています。

そうすることで「このままでは目標達成できないな」とか「理想には届かないな」というギャップへの気づきと、「じゃあ、もう少し行動しないといけないな」という意欲が生まれるんです。