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猫を愛するように、自分のことも愛せるようになれたら。嫉妬が教えてくれた本当の自分とは? なおにゃんインタビュー

猫を愛するように、自分のことも愛せるようになれたら。嫉妬が教えてくれた本当の自分とは? なおにゃんインタビュー

温かい絵柄と優しい言葉で見る人の心を癒し、SNSの総フォロワー52万を超える(2026年1月現在)イラストレーター/絵本作家、なおにゃんさんの新刊『「幸せ」とかわかんないけど今日も猫がいるから幸せ。』が、2025年10月に幻冬舎コミックスから発売されました。

新卒で入った出版社でメンタルを患い、2度の休職を経て「会社員は無理」と悟って退職。絵本作家としてデビューするもコロナ禍で鬱になってしまい、リアルでは言いづらい赤裸々な告白をSNSで綴ったことで一躍、人気アカウントに────という波瀾万丈のキャリアを歩んできた、なおにゃんさん。メンタルを題材に何冊ものコミックエッセイを著してきた彼女が、初めて猫との暮らしを描いた一冊です。

黒、サバ、キジ、サビと、1頭ずつ増えて今や4頭を数える「いるだけで可愛い」猫たちとの日々の中で、なおにゃんさんが大切な気づきを得て自分を取り戻していく過程は感動的で、かつクスッと笑える瞬間もいっぱいです。過去の作品との連続性と新境地の両方を楽しめる新刊を中心に、たっぷりお話をうかがいました。

profile
なおにゃん
茨城県出身。大学卒業後、出版社に就職するも職場環境が合わず、鬱と適応障害と診断され2度の休職を経て退職。絵本作家としてデビュー後、2020年5月よりTwitter(現X)でメンタルに関する発信を開始。そのイラストとメッセージが大きな反響を呼び、SNSフォロワー数は52万人を超える。著書に『うつ逃げ ~うつになったので全力で逃げてみた話~』(KADOKAWA)、『心がどんどんラクになる がんばらない練習帳』(永岡書店)などがある。
https://www.instagram.com/naonyan.naonyan/
https://x.com/naonyan_naonyan
https://www.threads.com/@naonyan.naonyan

猫は人生の大きな柱

なおにゃん

最初の黒猫ちゃんをお迎えされたのはコロナ禍のころですか?

コロナの前ですね。もともと絵本の仕事をしてて、絵本もなかなか売れないし、仕事もないし、この先どうしようかなって悩んでたときに、友達から黒猫ちゃんのお話をいただいて飼うことになりました。

猫ちゃんたちとのエピソードやなおにゃんさんの心境の変化が克明に記録されていますね。日記をつけていらっしゃるんですか?

自分で言うのもなんですけど、記憶力はけっこういいと思うんです。あと、コロナ禍で鬱になって自己肯定感がダダ下がりして、自分を否定する癖がついちゃって。

何をやっても楽しくないし、このままだと生きていけないと思うくらい落ち込んだときに、その日あったいいことを自分で書き出すようになったんですね。それが日記代わりになってるかもしれないです。

『うつ逃げ~うつになったので全力で逃げてみた話~』(KADOKAWA)に描いていた「ホメ療法」ですね。漠然とした言い方ですが、インターネットで猫って人気があるような気がします。

わかります。ネットと相性がいいですよね。偏見ですけど、犬派より猫派のほうが内向的な人が多くて、内向的だとインターネットが好きな人が多い、みたいな傾向があるのかなって思ったりします。実際、「自分も猫を飼ってみたい」ってDMがすっごい来るんですよ。

私が本にこめたメッセージも「猫を愛するように、自分のことも愛せるようになれたら」ということだったりするので、「動物を通して自分も一緒に成長していきたいなと思って、猫と暮らせる物件を探し始めました」みたいに言われると、いくらか伝わってるのかなって。

もちろん生き物だから、一生面倒を見れるかどうかの資格は問われるし、安易に「どんどん飼ってください!」とは言えないけど、保護猫ちゃんと出会うきっかけのひとつにはなれたかな、とはちょっと思ったりしますね。

なおにゃん

なおにゃんさんが猫ちゃんたちと暮らすようになって本当によかったと思われるのは、例えばどんなことがありますか?

鬱の経験もあって、もう「今日ごはん食べなくていいや」みたいに自暴自棄になりがちで、今もそう思うことはあるんだけど、生き物を預かって一緒に暮らしてると、責任があるじゃないですか。

雨の日なんか絶対に出かけたくなかったけど、猫ちゃんのごはんがなくなってたら出かけるし、そもそも猫ちゃんのごはんを買うためにちゃんと働こうと思うし、人間としてちょっと向上できたみたいな(笑)。当たり前の暮らしができるように、ちょっとだけなれた気がします。

うんうん。とてもよくわかります。

ごはん代も病院代もかかりますしね。保護団体の方たちとも仲よくなって、その付き合いがあるから4匹もお迎えできたんですけど。

ささやかな夢じゃないけど、これからも協力していきたいし、将来的には保護猫活動もしてみたいので、必要な資金を稼ぐために仕事しよう、とも思えました。

すごい! 尊敬しちゃいます。

いえいえ、全然大したことないんですけど……。保護猫団体って、退職された方やご高齢の方がボランティアで活動されてるケースもあるんですよ。社会と関わり続けることのできる、生きがいになっているというか。

例えば、孤独だったり、ひとと関わるのがあまり上手じゃなかったりする人たちが、猫を通して他人や社会と接点を持てる可能性ももしかしたらあるんじゃないかな、と思って。そういった意味でも、保護猫活動にはすごく興味があります。

すばらしい。わんちゃんだとお散歩のときに犬同士がからむことで飼い主同士が仲よくなるとかよく聞きますけど、猫ちゃんの飼い主さんにはそういうことはありますか?

外でお散歩をするということはありませんけど、猫好きコミュニティみたいなものはあるようなので、そういうこともやってみたいです。

先日DMで、「親は毒親だし、年末年始に帰る実家もないし、本当に寂しいから、保護猫カフェに行って自分を癒したいと思います」みたいなメッセージをもらったりして、孤独な方たちと猫好き同士で交流できる場っていうんですか。そういうものを提供できたらいいな、とかも考えてます。妄想ですけどね。

妄想でもなんでも、やりたいことがあるのは生きがいにつながりますからね。「あれをやりたいから、それまではなんとか生きよう」みたいな。なおにゃんさんにとって、今は猫ちゃんがそういう存在になっているのかもしれませんね。

うん、人生の張りですね。大きな軸というか柱をひとつもらえたような気がします。飼い始めるときはそんなこと全然考えてなかったけど、結果的にそういうものになりそうで、猫ってすばらしいなって思います。

つらいのは反応がないこと

なおにゃん

猫ちゃんのもっとも好きな瞬間ってどんなときですか。

やっぱり寝てるの見ると落ち着きますね。昼寝してるときに猫が来てくれて一緒に寝てるときとか、なんて言うのかな……永遠を感じるんです。

物理的な時間というよりも、「この時間が続けばいいのに」って思うその感情の中に永遠がある気がして。「これが永遠ってものなんじゃないかな」とか思ったりします。

素敵……。なおにゃんさんはそういう洞察もすごいけれど、ストーリーの作り方もお上手ですね。物語を組むのはお得意なほうですか?

あ~、どうかな……でも得意かも。得意、だと思います(笑)。漫画はわかんないことが多くて、難しいですけど。

絵本作家デビューのきっかけが自分で描いたラフだったとか、最近は原作だけ担当された本もあったりして(『ばんごはんえき』教育画劇)、もしかしたら絵以上に物語がお得意なタイプなのかなと。

それはあるかも。絵よりもどっちかっていうと言葉ベースですね。でも絵本は難しいです。全然わかんない、正解が。読むのが自分じゃないから、よけいに難しさがありますね。感覚的っていうか。

なおにゃん『「幸せ」とかわかんないけど今日も猫がいるから幸せ。』書影

ご自身にとって「なおにゃん」とはどういうものなんでしょうか?

100パーセント自分ではなくて、自分の中の特に暗い部分というか、気にしちゃったり、病んじゃったりみたいなところを抽出した感じです。

始めたころはほんとに鬱で、「誰かに聞いてもらいたい」って気持ちでやってました。今は幸いそこまでしんどくはなくて、鬱のときもありながら、なんとかやれてますけどね。

絵本作家をやっててつらかったのが、「売れない」とか「仕事がない」とかよりも「反応がない」ことだったんですよ。届いてないっていうか。SNSに絵を載せても本を出しても反応がなくて、「こんなに頑張っても誰も見てくれないんだ」みたいなつらさがあって(笑)。

その後にこのアカウントを始めたんですけど、コロナ禍という時流もあって、本音を赤裸々に書いたことで反応がいっぱいもらえたのは、単純にうれしかったです。

そうしてやむにやまれず始めたアカウントでの投稿がたくさんの共感を得て、結果的に何冊もの本を出されているのは、すごいことだと思います。

実は、去年(2024年)あたりから今までのテーマでは書ききった感じが自分の中であったんです。ちょうどそのタイミングで幻冬舎コミックスの編集さんからお声がけいただいて。だから今回、この本を描けたのは、テーマをひとつ見つけられたな、と思えるきっかけになりました。

その編集さんとはコミティアでお会いしたんです。3年前に初めて参加して、あんまりお客さんが来なくて「場違いだったかな……」とか思ってたら「なおにゃんさんですか?」って話しかけてくれて。

担当作家さんが出展されていたのでいらしてたそうなんですけど、私のことも前からご存じで、「最初のご本から拝読してました」みたいにお話ししてからお名刺をくださったんです。

いい出会い方ですね。

テーマも任せてくださって、「これだ」「描くぞ」っていうタイミングがなかなか訪れなくて迷ってた間も、ずっと待っててくれました。