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仕事も料理も「自分にとっての“心地いい”を大切に」料理家・今井真実の仕事術

今井真実 小沢あや

SNSは「マイナスなことをつぶやかない」

今井真実

小沢:ところで今井さんはSNSをすごく上手く活用なさっていると思うんですが、SNSをやる上で気をつけていることはありますか?

今井:マイナスなことはつぶやかない。たぶん、やり始めちゃうと歯止めがきかなくなると思うんです。「これも言っちゃおう」みたいな。

小沢:今井さんの発信って、温かい日常を切り取っている印象があります。文章もすごく魅力的ですよね。感性を磨くために努力していることはありますか?

今井:これといってないんですけど、生活するうえで心地いいことを増やしたいな、とは思っています。ストレスをためないように。

小沢:例えば、どんなことですか?

今井:眠る前にストレッチをするとか。ちょっと頑張るだけで、「私、ちゃんとやれた」と思えるんですよね。あとは、息子が美術館好きなので一緒に行って、ぼーっと鑑賞しています。カラフルな作品から、「この色彩って合わせるときれいに見えるな。料理に使えそうだな」と思うことはありますね。

今井真実
(今井さんのnoteより)

小沢:意識していないときにも料理のアイデアがわくんですね。一方で発信ではテキスト以外にも、音声メディアや動画など、新しいかたちにもどんどん挑戦されていますよね。いろいろやってみたうえで、結果的にテキストに集中することにしたのでしょうか。

今井:更新が止まっているYouTubeも、やめたつもりはないんですよ。「いつかちゃんとやる!」って思っています(笑)

小沢:(笑)。でも、動画ってすごくコストがかかるから、それが良かったとも思います。結果的に、noteの更新に熱を込められたんじゃないかなと。SNSと言えば、最近の私はTwitterがなくなったらどうなるんだろうと、不安ですね。

今井:わかります。だから私も、いろんなことをやっているんですよね。後ろ向きな話をすると、料理教室も「これならできる」と始めた働き方だったんです。私は昔から料理家になりたかったわけではなくて。「料理を教えるのは苦じゃないし、子どもを育てながらでも続けられそうだな」と思ったから始めたので。今はお仕事の形態に変化が起きたけど、また10年先はどうなっているか誰にもわからないですよね。今は忙しいけど、しんどさよりも楽しみのほうが大きいから、それを大切にしていきたいなと思っています。

自分のしたいことがみんなに受け入れられたらうれしい

小沢:SNSを使っていると、バズをどこまで求めるかが難しいですよね。

今井:自分で気に入ってる部分は、あんまり変えたくないんですよね。でも、そうすると、「ファン層が広がらないのでは」「スター料理家になれないですよ」と言われることもあって。

小沢:そんなこと言われるんですか!?

今井:そうなんです。そうすると私も、「そうなんだ。じゃあ、変わらないとダメなんだ」って考えるようになって。そのうちに、自分が目指したいものがわからなくなるんですよね。

小沢:難しい問題ですね。

今井:でも、最近はなんとなく答えが見つかった気がしてるんです。私は、自分の好きなことやしたいことがみんなに受け入れられたらうれしいんです。もし受け入れられなかったとしても「運だから仕方がないか」と最近は思っています。

#編集後記

取材場所は、ご家族4人で暮らす今井さんのご自宅でした。今井さんの料理が生まれるのは、スタジオではなく家庭用のキッチン。だからこそ、リアルで大衆に響くレシピができるんだなと思います。

「読者が自分のレシピに少しずつアレンジを加えて、家の味になっていくのがうれしい」と話す今井さん。「レシピはレシピ通りに作らねば」と考えていた私からすると、目からうろこの発言。今井さんらしい余白があるレシピも、皆さんが惹かれる理由の一つなのかもしれません。

今井真実 小沢あや

取材/小沢あや(ピース株式会社)
構成/結井ゆき江
撮影/高浦宏幸

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