FREENANCE MAG

フリーランスを応援するメディア「フリーナンスマグ」

著作物が勝手に使われる!? 2026年から施行される未管理著作物裁定制度について、弁護士が著作権者側の視点からわかりやすく解説

著作物が勝手に使われる!? 2026年から施行される未管理著作物裁定制度について、弁護士が著作権者側の視点からわかりやすく解説

2026年度から施行される「未管理著作物裁定制度」は、連絡の取れない著作権者に代わり、国の裁定に基づいて著作物を利用できる新制度です。この法律により、「未管理」とみなされた作品は、知らぬ間に誰かに使われる可能性があるかもしれません。

この記事では、この制度の仕組みと、クリエイターなどの「著作者」が取るべき行動について、防衛と活用の視点を含めて解説します。

未管理著作物裁定制度とは? クリエイターに何が起こるのか

未管理著作者裁定制度は、国の裁定を得ることで、第三者が未管理の著作物を自由に利用できる制度です。

本来、第三者が著作物を利用するためには、原則として当該著作物の著作権者の許可を得る必要があります。許可なく著作物を利用した場合には、著作権法に違反し、違法となります。

裁定とは

法律上の要件を満たす場合に、文化庁長官が、著作物の利用を認める決定をすること

未管理著作物裁定制度ってなに? 2026年度からスタート|文化庁

しかし、未管理著作物裁定制度は、著作権法の例外的措置として、一定の要件を満たす著作物については、国(文化庁)の裁定を得ることになる法律です。

そのため、著作権者が許可をしていなくても、第三者が適法に著作物を使用できるという仕組みです。

これまでは、権利者が不明で、利用の許諾を得るのが難しい「オーファンワークス」(Orphan works/孤児著作物)のみが、文化庁の裁定制度の対象でした。

しかし、2023年に改正された著作権法に基づき新設される未管理著作物裁定制度(2026年施行)では、放置されている公開済みの作品(著作物)も、国(文化庁)の裁定対象となります。

当該作品が著作権管理団体に登録されておらず、また、「無断利用禁止」などの明確な意思表示がない場合は「未管理」として、この裁定制度の対象となるため注意が必要です。

裁定制度に基づき、知らないうちに第三者に作品を利用されるリスクを回避するためにも、「未管理著作物裁定制度」の内容をしっかり確認しておきましょう。

制度創設の背景と立法者の狙い

未管理著作者裁定制度が創設された背景には、「ネット時代に蓄積する大量のアーカイブ」と「AIの発展」があります。また、文化を発展させたい文化庁の思惑も関係しているでしょう。

インターネットの普及により、ネット上には多数の写真やイラスト、動画などの作品(著作物)が「アーカイブ」として存在しています。加えて、AIの発展により、過去の埋もれているアーカイブへのアクセスも容易になってきています。

しかし、アーカイブに残された作品の中には、著作権者が誰かわからない、あるいは、著作権者の利用可否の意思確認が難しいものがたくさんあります。

文化庁は、こうした著作権者の意思確認が難しい著作物を対象に、第三者が利用可能になる制度整備をし、眠っている著作物の活用を促すことで、文化の発展を図ろうとしています。

なお、従来の制度においては、「権利者が不明の著作物」に対してのみ、裁定が認められていました。2026年から新しく始まる制度の目的は、「未管理の著作物」についても裁定の対象となるため、第三者の利用機会がより多くなるでしょう。

※引用:未管理著作物裁定制度ってなに? 2026年度からスタート|文化庁

一方、第三者による著作物利用を自由に認めた場合、著作権者の権利が不当に侵害されたり、著作権者の意思がないがしろにされたりする懸念もあります。

そこで、未管理著作物裁定制度では、以下のような著作権者に配慮した内容も定められています。

  • 著作権者への使用料相当額として申請者があらかじめ補償金を納付する
  • 裁定による使用期間を3年以内とする
  • 権利者から申し出があった場合は、期間内でも裁定を取り消す

これにより、著作物の有効活用を促して文化を発展させるという「公益」の維持と、補償金や裁定取消による創作者を尊重する「権利者の利益」がバランスよく取れるよう図られています。

自分の作品が「未管理」とみなされる条件とは?

著作権法における従来の裁定制度では「権利者不明」の作品だけが対象でしたが、改正により新設される未管理著作物裁定制度では、「未管理」のものも裁定の対象になるという点が大きな違いです。

「未管理」の要件が設けられているのは、原則的には「著作者が第三者の著作物利用の可否を判断する権利」があることに由来します。

著作権者が明確であり、直接問い合わせることで著作権者の意思確認が可能なのであれば、あえて国が裁定する必要はありません。制度の趣旨を踏まえつつ、以下の「未管理」の具体的な適用要件を確認しておきましょう。

未管理の具体的な適用要件
  • 管理団体に登録されていない
  • 問い合わせ窓口が明示されていない
  • 著作権管理に関する意思表示がなされていない

管理団体に登録されていない

著作物は、音楽なら「JASRAC」、写真なら「CPRA」など、著作物の種類ごとに管理団体が存在します。

管理団体に登録されている作品を第三者が利用したい場合は、管理団体に問い合わせることで許可や利用ルールを確認できるため、文化庁の裁定は必要ありません。

そのため、管理団体に登録されている著作物は、未管理著作物裁定制度の対象外です。

問い合わせ窓口が明示されていない

問い合わせ窓口が明示されていない著作物は「未管理」とされます。

著作者の氏名が明示されていても、その問い合わせ窓口が明示されていなければ、第三者としては著作者に利用可否について確認するのが困難です。こうした場合、当該著作物は「未管理」とされ、裁定制度の対象になります。

著作権管理に関する意思表示がなされていない

著作物について、「無断利用拒否」、「非営利なら許諾不要で自由に利用OK」など、利用ルールが明示されているものは、「著作権者が利用を拒否している」、あるいは「一定のルールに則って利用することを著作権者が認めている」とされるため、「未管理」とはなりません。

一方、著作権管理に関する意思表示がなされていない著作物は、「未管理」のものとして裁定制度の対象となります。

上記のような「未管理」とされる条件を見ると、SNSの投稿や自己出版など、個人クリエイターによる著作物ほど、未管理に該当しやすくなるかもしれません。

どんな人にどんな形で“使われて”しまう可能性があるか

未管理著作物が使われてしまう具体例としては、以下のようなものが考えられます。

未管理著作物が使われてしまう具体例
※クリエイターを「X」とした場合

  • Xが自分自身を示すものとしてデザインした犬のキャラクターが、A会社の商品のPR用マスコットキャラとして使用されていた
  • Xが作った俳句が、B会社の商品のキャッチコピーとして使用されていた
  • Xがかつて作った詩が、一部だけ改変されて第三者Cの作品として発表されていた
  • Xが自分で撮った部屋の写真を、第三者のユーチューバーDが動画内で背景として利用していた

上記の例で挙げた第三者による著作物の使用は、原則としては著作権者であるXの承諾を得て行わなければなりません。

承諾なしに使用していた場合、著作権者であるXは、A~Dに対して、著作権侵害として「販売の差し止め」や「損害賠償」を求めることができます

一方、第三者A~Dが文化庁に申し立てて未管理著作物の裁定を得て、裁定で定められた条件の下で利用していた場合には、違法ではありません

未管理著作物裁定制度では、申請者が裁定を受ける際に使用料相当額の補償金をあらかじめ供託することが定められています。

言い換えるなら、未管理著作物裁定制度は、「補償金供託」によって、著作権者不在でも利用OKになる制度です。

申請者は、裁定の申請の際に利用方法を特定する必要がありますが、利用方法に著作権者の意向は考慮されません。

そのため、悪意のない利用方法であっても、著作権者の意向からかけ離れた利用方法が採られるおそれもあり、作者が知らないまま商用利用される可能性もあります。

利用された著作物の著作者はどうすればいい?

未管理著作物裁定制度のもとで、著作物が第三者に使用された後も、著作権者は裁定の取消を求めることが可能です。

裁定の取消を求めれば、今後の利用禁止や利用ルールの協議に加え、利用された期間の使用料に相当する補償金を受け取れます。

  • 裁定の取消により今後の利用禁止/利用ルールの協議を求めることができる
  • 使用料相当額の補償金を受け取ることができる

裁定の取消により今後の利用禁止/利用ルールの協議を求めることができる

未管理著作物裁定制度のもとでの第三者による著作物利用を止めさせたい場合、著作権者は、裁定の取消を求められます。

裁定の取消を求める際、権利者側はまず、「当該著作物の管理事業者に委託する」、「著作物の利用に関する協議を受け付けるための連絡先を公表する」などして、裁定制度を利用した者と、著作物利用に関する協議を行う意思を明確にする必要があります。

上記の要件を満たして著作権者から裁定の取消を求めた場合、文化庁は、裁定を受けた申請者に対して弁明の機会を与えたうえで、取り消すかどうかを判断します。

この過程において、「今後の著作物利用についての可否や使用ルールについて協議したい」と申請者側から申し入れがあるかもしれません。今後の使用を一切止めさせたいのであれば拒否も可能です。また、使用を認める際の条件として、使用目的・期間・使用料などを協議することもできます。

使用料相当額の補償金を受け取ることができる

著作物の利用に関して裁定制度を利用する場合、文化庁は著作権者の権利を守るため、申請者に使用料に相当する補償金を供託するよう求めています。そのため、裁定が取り消された場合でも、著作権者はその金額を受け取ることができ、利用による不利益を被ることはありません

未管理著作物裁定制度では、裁定の効力が上限3年とされているため、著作物の使用料相当額の3年分を一括して供託することになります。著作権者の申立てにより裁定が取消された場合、使用料(裁定のときから取消までの期間)に相当する金額を、補償金の中から受け取ることができます。

なお、補償金の金額は、裁定の際に文化庁(登録確認機関)が、同種著作物の使用料の一般相場をもとに決定します。補償金の金額に不服がある場合、裁定があったことを知った日から6カ月以内に提起し、保証金の増額を求めることも可能です。

著作物の使用状況を調べる方法は?

未管理の作品に対する裁定が行われた場合、文化庁はインターネットなどで公表することが法律で義務付けられています。そのため、自身の作品(著作物)が、制定制度によって使用されているどうかは、文化庁に問い合わせるか、文化庁が公表しているWebサイトにて検索することで調べられます。

加えて、実際の裁定は、文化庁が指定する「登録機関」、補償金の供託は「補償金管理機関」など、民間団体が行うため、これらの機関に問い合わせることも可能です。

また、未管理著作物裁定制度による裁定の効力は、3年が上限とされていますが、更新も可能です。そのため、作品の著作権者が検索や問い合わせをせず、利用に「気づかない」場合、長い年月にわたって使われ続ける可能性もあります。

著作権者が今からできる3つの「自衛策」

未管理著作物裁定制度によって著作物が第三者に利用されることを防止するためには、「未管理」と判断されない対策が必要です。

  1. 自身の連絡先・管理方針の明記
  2. 使用料相当額の補償金を受け取ることができる
  3. 管理団体や著作権情報データベースへの登録
  4. 自動検索サービス・名前アラートの活用

①自身の連絡先・管理方針の明記

未管理著作物裁定制度が利用できるのは、著作権者の意思が明確でない場合です。

そのため、ポートフォリオサイトやSNSなどで「商用利用禁止」を明記したり、作品に著作権マークを付けたり、「Creative Commons(クリエイティブ・コモンズ)」で著作物の取り扱い方針を明示しておけば、管理意思が明確に示されていることになるため、未管理著作物裁定制度の対象外になります。

②管理団体や著作権情報データベースへの登録

著作物を以下のような管理団体に登録しておけば、未管理著作物裁定制度の対象外となります。

※参照:著作権等管理事業者登録状況一覧(令和7年4月1日現在)(全28事業者)

③自動検索サービス・名前アラートの活用

Googleアラート、著作物のトラッキングツールの活用もひとつの手段です。

これは一種のエゴサーチのようなもので、自身の著作物が勝手に使用されていないか、Googleアラートやトラッキングツールを利用し、インターネット上を調査することができます。

これらのツールを利用すれば、万が一、著作権を侵害するような不正利用が発見された際に、迅速な対応が可能となります。

また、定期的にチェックを行うことで、権利者として管理意識があることを客観的に示すことができ、「未管理」と判断されるリスクをさらに低減できるでしょう。

制度を“逆手に取る”使い方もある?

未管理著作物裁定制度は、著作権者にとってデメリットばかりの制度ではありません。第三者が裁定を受けて作品を使用することで、作品(著作物)が世の中に広く知られる可能性もあります。また、供託された補償金を受け取ることで副収入を得ることも可能です。

今まで眠っていた作品が新たに脚光を浴びることで、著作権者のモチベーションが上がり、活動再開のきっかけになるかもしれません。さらに、作品が注目されれば、ライセンス契約やコラボレーションといった新たなビジネスチャンスが生まれ、作品の市場価値そのものが再評価される可能性も秘めています。

登録確認機関・補償金管理機関の仕組みと注意点

上記でも少し触れましたが、裁定を行うのは文化庁ではなく、文化庁から委託を受けた登録確認機関(民間機関)です。これは、未管理著作物裁定制度における手続きの簡易化、迅速化を目的としています。

また、補償金は法務局への供託のほか、補償金管理機関(民間機関)への預入で行えます。補償金管理機関は、基本的には三菱UFJ銀行などの民間の金融機関が行う予定です。

※参照:未管理著作物裁定制度の創設等を踏まえたオンライン裁定手続の在り方に係る調査研究報告書 2025年3月|三菱UFJリサーチ&コンサルティング

裁定を行う登録確認機関は、複数設けられる予定です。ただ、登録確認機関による審査は法令の基準に則って行われるため、裁定結果(基準)が登録確認機関によって異なることはないでしょう。

裁定において登録確認機関が主に審査するのは、当該著作物が「未管理」であるかどうかという点です。そのため、裁定を回避するためには、作者が「未管理」と判断されないよう管理することが重要になるでしょう。

特に注意すべきなのは、裁定を受けようとする第三者から、著作権者に問い合わせがあった場合です。国が定める基準では、利用希望者が権利者側へ問い合わせしてから14日を経過し、権利者側が回答しない場合、著作権者の意思が明確ではない「未管理」の扱いを受けるためです。

作品の利用を希望する第三者から問い合わせがあった場合は、14日以内に必ず返答をしましょう。回答内容は、「少し待ってほしい」、「とりあえず今は許諾できない」などでも構わないとされています。しかし、なにも回答せず放置した場合は、「未管理」として裁定が下りてしまう可能性があるため、必ずなんらかの返答をするようにしましょう。

※参照:未管理著作物裁定制度ってなに? 2026年度からスタート|文化庁

著作権者の所在が不明のオーファンワークスとは?

2026年から始まる未管理著作物裁定制度ですが、裁定制度自体は以前からありました。

いわゆるオーファンワークスというもので、オーファンとは「権利者不明の著作物」を指します。権利者がわからない著作物を有効活用できるようにしようという制度目的の下で、1972年に始まった制度です。

文化庁のデータベースによると、1972年から2025年までの間に、約41万6,000件の裁定が出されています。ただ、そのほとんどは申請者が国立国会図書館などの公的機関であり、民間事業者が申請して認められた裁定はほとんどありません。そのため、オーファンワークスはほとんど活用されていませんでした。

また、オーファンワークスの対象は、文字通りに権利者が不明であるか、権利者の氏名などが判明していても連絡が取れない場合にのみ限定されているため、利用しにくい制度です。

こうした実情を踏まえ、国(文化庁)は、著作権法を改正し、裁定の対象を「未管理著作物」に広げ、著作物を有効活用して文化の発展を図ろうとしています。

まとめ

未管理著作物裁定制度は、2026年度から始まる新しい制度です。著作権者としては、自身の許諾なく作品が使用されるおそれがあるとのデメリットに目が行ってしまうかもしれませんが、メリットもあります。

例えば、裁定された後でも取消を求めることもでき、使用期間に応じて補償金を受け取ることも可能です。また、裁定を受けないためにできる自衛策もあります。加えて、これまで眠っていた作品が裁定制度の活用によって注目を浴びるならば、クリエイターの創作意欲が刺激されるかもしれません。

制度の内容を正確に理解し、上手に活用していきましょう。


▼あわせて読みたい!▼