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猫を愛するように、自分のことも愛せるようになれたら。嫉妬が教えてくれた本当の自分とは? なおにゃんインタビュー

猫を愛するように、自分のことも愛せるようになれたら。嫉妬が教えてくれた本当の自分とは? なおにゃんインタビュー

「動物嫌い」って言いづらい?

なおにゃん

なおにゃんさんの自画像はうさちゃんっぽいですが、他の動物もお好きですか?

嫌いではもちろんないですけど、一般的な「動物好き」という人と比べると、普通というか……。と言ってふと思ったんですけど、「動物嫌い」って言いづらいかもしれないですね。なんかイヤな人みたいで(笑)。会ったことあります?

僕はないですね。世の中にはいるんでしょうけど。

『ファーストキス 1ST KISS』という映画で、主人公の松たか子が「動物が嫌いだって堂々と言える社会に早くならないかな」って言うシーンがちょっとバズってました。脚本家が坂元裕二で、さすが!って思った記憶があります。

「動物嫌い」って言いづらいよなって。モテなさそうだし(笑)。行ったことないからわかんないけど、合コンで「俺、動物嫌いなんだよね」みたいな人がいたら、引きそうじゃないですか?

いかにも優しくなさそうですもんね(笑)。確かに言うのは勇気がいりそう。

いたら話を聞いてみたいです。

猫嫌いの人はたくさんいますけどね。

うちのおばあちゃんが実は猫が嫌いでした。実家に猫がいたんですけど、おじいちゃんおばあちゃんと同居することになったときお母さんが悩んでました。なるべく接しないように隔離したり(笑)。

おばあちゃん、野良猫をよく追い払っていましたから。猫のおしっこってアンモニアが強いから、土が酸性化して植物が枯れちゃうんですよね。

僕の実家にいた猫ちゃんは祖母と超仲よしで、いつもこたつの上に座って二人で会話していましたよ。

何かで読んだんですけど、猫って人間の言葉が100語ぐらいまでわかるんですって。自分の名前も認識してるし、「ごはんだよ」とかもわかるし。

意思疎通できてる!と感じるとき、あるでしょう。

あります。……あるかな(笑)? ちょっと待って、ある気がしたけど……落ち込んでるときに寄り添ってくれるのはありますね。

初めて感じた、突き上げてくるような嫉妬

なおにゃん

なおにゃんさんはこれまでも、いろいろな経験をされる中でやってみたいことの種を見つけて、ひとつひとつ育てて形にしていくようなことをされている印象があります。

成り行き、行き当たりばったりですけどね。

そう考えると、600倍の競争率を突破して出版社に入って、病気になってしまったから仕方ないとは思うんですが、よくフリーになられましたよね。すごい決断だと思います。

徹底的に向き合ったんです。それまでは受験勉強にしても、努力すれば点数が取れるっていう感じでしたけど、会社員生活に関しては「本当に向いてないんだ」って、頭の中で活字になるくらい思って(笑)。

2回めに休職したタイミングで1年通して向き合ったのと、あと編集者をやってたときに、作家さんをサポートしながら内心どこか悔しいと思ってて。

本当は自分もやりたい、と。

そうそう。自分が本当は表現したいのに、編集者の肩書きがかっこいいとか思ってやってたのは、心の深いところでウソをついてるんだなって気づいたんです。

迷って中途半端なときがいちばん苦しいから、「作家になりたい。ダメでもいいから、とりあえず頑張ってみよう」って、会社を辞めてラフを描き始めました。

自分が表現したいという気持ちに気づけたのも、作家さんのサポートをしたからこそ、とも言えるかもしれませんね。

誰にも言ってないんですけど、具体的なきっかけがあって……どこかに書いたかな。休職中にたまたまFacebookを見てたら、美大に行った高校時代の友人が絵の大きな賞を取ったのを知って、すっごい悔しくて。

その時、突き上げてくるような嫉妬みたいなものを感じたんです。それで「あ、自分は描きたかったんだ」って気づけたっていうか。

なおにゃん

高校は私立の進学校で、ずっと勉強ばっかりしてるような学校だったんですけど、その子は途中から「美大に行く」と決めて、クラスも替わって付き合いがなくなっちゃって。一方的ですが、私はその子のことを「勉強から逃げたのかな……」とか正直思ってたんですよ。

その後、自分は大学を出て就職したけど、休職して「私、何をやってるんだろう」となったときに、自分の表現で結果を出してるかつての友人を見て、もう本当にみじめで。すごい覚えてます、そのときの感情。

そして、「描かなきゃダメだ」って思って描き始めたんですよ。恥ずかしい話(笑)。

いやいや、全然恥ずかしくないですよ。話してくださってありがとうございます。

嫉妬が教えてくれたっていうか、自分の欲望を。いちばん自分がダメな、みじめなときに見たからよけいに「うらやましかったんだな、本当は」って。

いまはどういう感覚ですか?

いまは、もうちょいフラットに見れてる気がします。

よかった、本当に。

うん。気づけてよかったです。環境のせいもあって、昔は偏差値が高いとか低いとか、そういう物差しで世の中を見てたところがあったけど、それが一回なくなって、みんなおんなじだなってフラットに思えるようになりました。

それは自分にとって成長だと思うし、殻を破れたなって思います。イヤなやつだったと思います。別に今もいいやつでもないけど(笑)。

他人を見下しながらイキり続けて生きるのも、それはそれでひとつの人生だと思いますけど。

でもしんどそうじゃないですか? わかんないけど。特に男性社会はそういうの大変そうじゃないですか。実はヒエラルキーを気にする人が多そうですよね。

露骨に見下してくる人はたくさんいますね(笑)。

今ももちろん他人と比べたりはしちゃいますけど、自分に合ったことをやれてるっていう確信じゃないけど、信頼というか。そういうのはベースにありますね。

ご自分に合ったことに出会えたタイミングが、ご友人よりも少し遅かったということですね。

一回つまずくまで気づかなかったんですね。「世の中ではこれが価値があることになってる」とか「お母さんがこれをよしとしてるから自分もそれが好き」とか、価値基準が本当に他人軸でした。

自分の主観的な欲望とか欲求と向き合ってこなかったっていうか、わかんなかったんですよね。今もよくわかんないけど。

時間軸をずらして過去の自分に向けて描く

なおにゃん

フリーランスになってよかったと思いますか?

よかったですね。先が見えないから、1年後、2年後どうなってるか、不安になろうとすればいくらでもなれますけど(笑)。

やっぱり自由でいられるのと、自分の心の欲求に従って行動できてるなっていう、自分への信頼を取り戻せたような感覚があります。

フリーになっても、いろんなビジネス上の人付き合いはありますよね。それと会社員生活はどう違いましたか?

ぼーっとするのが大好きなんですけど、そういう時間がやっぱり会社員にはないし、当時はリモートワークもなかったので、長時間、同じ人と同じ空間にいなきゃいけないのが苦しかったり、挨拶しなきゃいけないのとかもイヤでした。「なんでいまここにいるんだろう」みたいな気持ちが、オフィスにいる間ずっとありましたね。

他人軸と自分軸のバランスって、どうやって取っていますか?

私もめちゃくちゃ悩んでますけど、そうだな……「過去の自分が見たときに元気が出るかどうか」「面白いと感じるかどうか」みたいに、時間軸をずらして自分に向けて描く、みたいなことはしてるかな。

いまだに全然他人軸ですけど、そうすることで、ちょっとだけ脱却できる気がします。それこそ、「休職中で鬱でどうしようもなかったときの自分が、いま自分が書いてる言葉を読んだら励まされるかな?」とか。他人じゃなく自分基準で、時間軸をずらして考えるとかはやってますね。

それができるのは成長したからですよね。もともとなおにゃんさんは自分自身をちょっと離れて見るタイプですか?

それはありますね。つらいときとか落ち込んでるときも、すっごい悲しみながらも、同時にちょっと離れたとこから見てるみたいな。そういう視点は昔からある気がします。

そういう傾向が強そうな印象を、作品を読んでいて受けました。

本当ですか? こないだ心理職の方と話したんですけど、メタ認知ができる人ほど鬱になりやすいと聞きました。本心じゃなくて、そこで見えたものに合わせた行動をしちゃうんですって。それがストレスになるから鬱になりやすい、って言われて「へー、わかるかも」って。動物的にっていうか、感情のまま行動できる人のほうが鬱にはなりにくいのかな?と思いました。

なおにゃん

撮影/中野賢太@_kentanakano