アルバイトを解雇したらトラブルに。技術を教えた途端に辞められた。そんな採用トラブルの対策は?【法律の相談室】

案件が増えて忙しくなると、フリーランスでもアシスタントやアルバイトの採用を検討することはありますよね。しかし個人事業主や小規模法人の場合、採用のことでトラブルが起こったときに、自分一人で対処しなければならないこともあるでしょう。弁護士の辻悠祐さんに、フリーランスが知っておきたい採用関連のトラブルの対処法・予防法を教えてもらいました。

今回の相談者
Fさん:ハンドメイドのジュエリーや雑貨をインターネットで販売しているフリーランス作家。仕事が増えたためアルバイトを採用したところ、試用期間中にまったく技術が身につかなかったため解雇することに。その結果、本人から「納得がいかない」とクレームが。

雇用主が気を付けるべき解雇のタイミングとは?

よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐さん

Fさん:採用にまつわることでご相談したいことがありまして。今回の出来事を簡単にまとめると……。

最初の1か月は試用期間として、商品を作る技術を身につけてもらう。その後、実技試験に合格したら本採用という条件でアルバイトを採用。しかし技術が身につかなかったため、試用期間が終了する1週間前に本採用はないことを告知。賃金は試用期間を満了したとみなして全額支給したが、後日、※解雇予告手当を請求される。

※解雇日の30日以上前に従業員を予告なしで解雇する場合に、雇用主が支払う義務のある手当。

Fさん:といった状況です。あくまでも試用期間中の解雇でしたし、解雇予告手当を支払う必要があるのかと疑問を感じていて。

辻さん:なるほど。まずは、法律のルールを説明させていただきます。日本国内で労働者として働いている人であれば、労働基準法や労働契約法が適用されます。アルバイトとして採用しても労働者であることに変わりはないので、労働契約法や労働基準法の適用があります。労働基準法では、試用期間中であっても14日を超えて引き続き使用されるに至った場合は、原則どおり30日以上の解雇予告期間をおくか、30日分の平均賃金を予告手当として支払うことが義務づけられています。

不当な解雇は無効になる可能性がある

辻さん:そもそも今回は、解雇が有効なのかどうかという問題もあります。労働契約法16条では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と定めています。今回のように「技術が身につかなかったから」という理由での解雇は、合理的な理由を欠くものとして、無効になる可能性があります。解雇が無効になると、解雇期間中の賃料が請求されて、支払金額が大きくなるケースもあります。

Fさん:しかし、私の仕事を手伝っていただくには技術ありきなんです。技術の習得が遅く、どうしても継続していただくのが難しい場合は、どうすればいいのでしょうか。

辻さん:技術の習得が遅くても、労働者の教育・指導を粘り強く行うことが重要です。技術がどうしても身につかず、契約を終了したい場合は、よく話し合って合意による解約を目指すべきでしょう。

営業秘密の漏えいを防止するための対策も大切

Fさん:実はもう一つ気になることがあって。私は特殊な技術を使ってアクセサリーを作っており、その技術は当社の営業秘密です。中には、「その秘密を知るために働きたい」という人もいると思うんです。気持ちはわかるのですが、営業秘密を知った直後に退職されたりすると、技術が盗まれているような気もして。何か対策はありませんか?

せっかく時間をかけて教えたのに……

辻さん:一般に知られていない特殊な加工技術等であれば、以下のような対策が考えられます。

・社内の諸規程で営業秘密の取り扱いルールや、違反した場合のルールを定めておく

・採用時・退職時などに秘密保持に関する誓約書を交わしておく

・営業秘密の作業については、信頼のおける社員にのみ任せる

・営業秘密はロックがかかったところで管理して社員全員が見られる環境にしない

辻さん:悪意で秘密を洩らされることを防ぐのはもちろんですが、何が秘密なのかが分からずに「うっかり」ということも想定されます。その技術や情報が営業秘密であるという認識を、働いている方々と共有しておくことも大切です。

Fさん:そうなんですね。しかし、社内の規程を整備するといっても自分では難しそうなのですが。

辻さん:その場合は、専門家に社内規定の作成を依頼された方がいいかと思います。ただし専門家に作成を依頼する場合は費用もかかるので、どれくらリスクがあるのか、どれくらいコストを掛けられるのかという予算の問題も考えたうえで、最終的な判断をされるといいと思います。

Fさん:わかりました。少しでもトラブルが予防できるように、社内でも再度検討したいと思います!

profile
よつば総合法律事務所 弁護士 辻悠祐:中小企業や自営業者のトラブル、交通事故、債務整理、不動産、相続など幅広い分野を扱う。中小企業の顧問弁護士も多く務める。宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーでもあり、不動産や資産形成も得意とする。